2.次世代のエース

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「こっちこそ、ごめんね。」 柔らかそうな髪をかきあげて、篠原は腕の中のすみれに笑いかけた。 彼のことは、同期の間でも時折、話題になるので知ってはいた。 曰く、イケメンで学歴もあり、将来有望。 同じ部署で働けるなんて羨ましい。 すみれだって、その姿はもちろん目にしている。 確かに、篠原は整ったとても綺麗な容貌をしていた。 上司や先輩には可愛がられて、後輩の面倒見もいい。 社内には、彼女らしき人はいないとのことだ。 いればとっくに噂になっているだろう。 すみれからしてみれば、そもそも手が届くような人だとも思っていないので、完璧な人って、いるんだなーという目で見ることしか出来ないような人だった。 ぎゅっと抱かれて、思いの外、力強いその腕に驚いて心臓がどくんと音をたてて、跳ねる。 「篠原…さん…」 「あ、もう、大丈夫かな?」 「は…い。大丈夫です。」 今までチームが違うので、あまり接点もなかったから、直接こんな風に言葉を交わすのはほとんど初めてだと思う。 大丈夫、と返事をしたすみれは、そっと篠原の腕から離れる。 「さっき、葉山さんが資料室に入って行ったのが見えたんだけど、全然出てこないから、心配になって。つい、入ってきちゃった。」 そう言って笑う篠原は、確かに皆が言う通り、魅力的で素敵だ。 「つい、…夢中になってしまって。」 「うん。集中していたね。ごめんね、急に声を掛けて。」 今は社内にいるせいか、スーツではあるけれど、ジャケットは着ていなくてシャツ姿だ。 首から下げた社員IDを胸ポケットに入れて、すっきりと立っている姿はスタイルがいいんだなとつい、見とれそうになる。 柔らかい話し方は、すみれも怯えたり萎縮しなくて済んで、きっと優しくていい人なんだろうなとすみれは思った。
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