1857人が本棚に入れています
本棚に追加
3.期間限定の恋人
「葉山さん、実はお願いがあって…」
少し離れたところに立っていた篠原が、遠慮がちに口を開いた。
「はい?」
篠原は口籠っている。
いつもキビキビしている篠原のそんな姿は見たことがなくて、すみれは首を傾げた。
「俺の…」
「はい。」
「俺の、恋人になってくれませんか?」
「は…い?」
──恋人…?え?
何を言われているのかよく分からないけれど?
すみれは耳を疑う。
告白?にしては、篠原からは甘い雰囲気を感じない。
「あー、えっと、ごめん!突然すみません!それには理由があって…聞いてもらってもいいですか?」
照れた様子の篠原が慌てて説明するのには、こういうことだった。
篠原の母方の実家では、おばあさんが田舎の実家で一人で住んでいるそうだ。
小さい頃に、とてもよく可愛がってもらっていたが、どうもここ最近、体調が思わしくないらしい。
「大丈夫なんですか?」
心配になって聞くと、篠原は苦笑して返した。
「年相応ではあるんだよ。」
口を開けば、お嫁さんはどうなっているのか、と聞くので、彼女を連れていって安心させてあげたい。
けれど、今自分にはそういう人はいない。
困ったところに、ちょうどすみれと休みが合いそうだと知って、声をかけてみた。
「それに、チームは違うけど、葉山さんは信頼出来る人かなって、見ていて思ったし。」
最初のコメントを投稿しよう!