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「チームが違うのでなかなか頂く機会はないんですけど、自慢されるんです。うちのは葉山さんが入れてるから、美味しいって。だから、羨ましくて。」
信号待ちですみれから受け取ったコーヒーを、篠原は嬉しそうに一口飲む。
そんな風に言われているとは、思わなかったすみれだ。
けれど、自分が拘っていることを褒められることはとても嬉しい。
「知らなかったです。」
「好評なんですよ。それを楽しみに帰社される方もいますから。」
自分がやっていることをそんな風に見てくれている人がいるなんて、知らなかった。
すみれの胸がほっこりと暖かくなる。
両手で持った器に顔を近づけて、少しふー、と息を吹きかけている篠原の様子がなんだか可愛い。
篠原はもしかしたら、少し猫舌なのだろうか。
「信号、変わったらもらいますね。」
「うん。…葉山さん、敬語やめようか。恋人なのに敬語はおかしいでしょ?」
「はい…。」
そう返事すると、篠原にじいっと見られる。
違うでしょ?と言われているようだ。
「ん…うん?」
すみれが言い直すと、篠原は嬉しそうに笑った。
「そうそう。俺のことは、洸希って呼んでね。」
危うく受け取ったコーヒーを落としそうになるすみれだ。
「こ…こう…き、さん?」
「はい?なあに?すみれちゃん?」
にこっとすみれに笑う篠原は、イケメンと名高いだけあって、笑顔の破壊力が半端ない。
すみれは、胸をぎゅっと掴まれたような気がした。
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