11011人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日、まだ夢心地で出社。
何だか幸せな気分が続く。
朝から大量の書類整理も、難なくこなせてしまう。
「天宮ちゃん、仕事早いね」
私の動きをデスクから眺めて九条先生が言った。
「そうだ!メール貰ってたお友達の件だけど」
連休に入る前だったから、久米っちの件は先にメールで先生に伝えていた。
「はい!受けていただけますか?」
私は自分のデスクから立ち上がって先生のデスクの側に寄る。
「僕は構わないけど、天宮さんと仲の良い友達だからちょっとどうかなって。やっぱり赤裸々になることもあるから…」
確かに、この事務所に弁護士は先生しか居ないし、アルバイトの時間内で三井君に全てして貰うのには無理がある。
仕事上と言えど、私は久米っちのプライベートな部分を知ることになる。
「民事のそういった案件に強いやつが居る。腕もいいし、人当たりもいい。その弁護士を紹介することも出来るよ?」
先生はそう言ってくれた。
「友人にそのまま伝えてみていいですか?」
「いいよ」
先生はニコッと笑ってくれた。
ガチャと勢いよくドアが開いた。
「おはようございます」
入ってきたのは三井君だった。
「おはよ。あれ?今日出勤日だっけ?」
私はデスクに戻りながら問い掛ける。
「いや、違うっすけど、天宮さんの出勤日だと思って」
「えっ?」
「北海道の…」
そう言い掛けた三井君の言葉でピンときた。
「あぁ!お土産ね!」
「そうっす!新鮮なうちの方がいいかと思って」
彼は嬉しそうに話す。
「大丈夫なのに、日持ちするのにしたから」
私はデスクの下に置いていた紙袋を出して、九条先生と三井君にそれぞれ渡した。
「何っすか?これ…」
雲丹せんべいの箱を持って固まる三井君。
「雲丹、せんべい」
私がそう言うと九条先生が笑った。
「確かにこっちは蟹だ」
三井君は脱力していたけれど、九条先生は喜んでくれた。
最初のコメントを投稿しよう!