2. 発覚1週間前

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その日の夜、久々に居酒屋に向かった。 矢沢から召集がかかり、幼馴染の4人で集まった。 みんなでとりあえず乾杯し、ビールを一口飲む。 「みんな、せっかく結婚式に来てくれたのに、あんなことになって、ごめん!」 個室居酒屋の狭い空間で、久米っちが先に切り出したのは謝罪だった。 「何で久米っちが謝るの!?」 咄嗟に言葉が出た。 「そうだよ!久米っちは被害者だよ!?交通事故で言ったら当て逃げにあったみたいなもんだよ!?」 優樹菜が続いて言う。 矢沢は久米っちの横に座っていて、久米っちの背中を叩いた。 「みんな、ありがとう…」 少しやつれたように見える久米っちは、力なく笑った。 「ちゃんと話し合えたの?」 優樹菜が掘り下げる。 「うん…。まぁ、何度か話し合いの場は…。仕事場のこともあるから、難航はしてるけど」 久米っちの職業は教師。 小学校の教諭をしている。 相手は別の小学校で、同じく教師のはず。 「相手の男は、婚約中に出会った教育実習生だったらしくて」 「えっ!?」 私と優樹菜は予想もしなかった相手に驚いた。 「教育実習生ってことは…?」 「現役の大学生だね」 「えっ!?そんな若かったっけ!?」 「覚えてないよ!一瞬のことだったし」 私と優樹菜は思わず二人で会話する。 「おい!心の声駄々漏れだよ」 矢沢に注意される。 久米っちは力なくまた笑った。 「俺もビックリしたよ。相手は学生で、その相手とあんなこと起こすなんて…。人に道徳を教える立場の人間がすることじゃないよな」 久米っちはそう言って、ビールを飲んだ。 胸が痛む。 幼い頃からずっと一緒に成長した大事な友だち。 心から幸せを願って、祝福しに結婚式に出席した。 人生に一度の晴れの舞台。 それがあんなことになるなんて… 「天宮、相談なんだけど…」 向かいに座る久米っちが私にそう切り出す。 「話し合いに俺も両親も疲れてきてさ、やっぱり弁護士さんとかに任せた方がいい気がしてきて、天宮のとこの弁護士さんに頼めないかな?」 法の知識を持つ第三者が入ることは、大事なことだと思う。 「聞いてみるよ」 「悪いな…」 久米っちが申し訳なさそうに言うから、私は必死で首を横に振った。 「いい子だと思ってたのにね…」 優樹菜がしみじみ言う。 久米っちの相手のユリちゃんは、私達より3つ下で、2度ほど一緒に飲みに行ったりして面識があった。 私も、こんなことをしでかすとは思わなかった。 「人は見かけによらないんだよ」 強面の矢沢が言い切る。
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