2. 発覚1週間前

5/12
前へ
/364ページ
次へ
「幼馴染4人組初の既婚者誕生だって、散々祝って貰ったのに、ごめんな!今日は俺が奢るから!」 久米っちがそう明るく言う。 「久米っち!今日は記憶飛ぶまで飲んじゃいな!矢沢の奢りだ!」 優樹菜が宣言する。 「はっ!?」 矢沢が声を上げる。 「いいじゃん!いいじゃん!」 優樹菜が明るく言うもんだから、 「ま、まぁ…いいか。わかった、よし!飲め!」 矢沢が渋々納得した。 4人で乾杯してみんなでビールを飲み干す。 子供の頃は、何かあればストレートに励ましたり、頭を撫でたり、“頑張れ”って応援した。 大人になって、なぜか不器用になった私達。 どんな風に励ましたらいいのかわからない。 だけど、側に居て、一緒にお酒を飲む。 「久米っち、ほっけ好きだよね?」 「頼め頼め」 「あっ、山芋焼きも好きじゃん」 「よし、それも頼め頼め」 私と優樹菜が言うと、矢沢が陽気に反応する。 それを見て笑う久米っち。 頬がやつれた久米っちが、あまり食欲がないのはわかっていた。 だけど、もしかしたら今日は食べられるかもしれない。 そう思っていつもより賑やかに騒いだ。 「ありがとう、みんな」 久米っちがお礼を言う。 「一番結婚に近かった俺が遠退いたけど、みんなはどう?」 久米っちの問い掛けに、三人とも顔を見合わせる。 「俺は彼女募集中だ」 矢沢がやさぐれる。 「私の彼氏は売れないバンドマンだしね…」 優樹菜は苦笑い。 矢沢と優樹菜が私を見る。 「えっ?何?」 私は思わず問い掛けた。 「一番近いのは真白だよね」 優樹菜が言う。 「墨さんと同棲して5年くらい経つんじゃないか?」 矢沢がドンピシャで当ててきた。 矢沢と私は学生の時に同じ居酒屋でバイトしていた。 恭ちゃんと出会ったバイト先は、矢沢の紹介だった。 だから矢沢は恭ちゃんのことを知っている。 「天宮、どうなの?」 久米っちが穏やかに問い掛けてくる。 「あ…、うん、まぁ…」 何とも言えない。 「なんだよ、その煮え切らない反応は!」 矢沢が突っ込んでくる。 「あ~…、恭ちゃん今仕事大事な時期で、もう少しこのままかな」 何だか恥ずかしくて、笑って誤魔化した。 「まぁ、ここは安定だよね。放って置いてもそのうち結婚するっしょ」 優樹菜もそう言って笑った。 「久米!お前、今こんなの聞いて楽しいか!?」 矢沢が久米っちの肩を掴む。 「こんな時だからこそ、みんなが通常運転でホッとするよ」 久米っちは優しい。 いつも穏やかで、みんなのことを大切に思ってくれる。 なんで、久米っちにこんなことが起きたのか… 神様、意味はあるの?
/364ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10978人が本棚に入れています
本棚に追加