1. 発覚1ヶ月前

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白い大理石で造られたチャペルには、中央に真っ赤な絨毯が敷かれて真っ直ぐにのびていた。 純白のウェディングドレスの花嫁がベールに包まれ、花嫁の父のエスコートで、今、花婿の元へと向かう。 花婿は、緊張した面持ちで迎える花嫁を牧師台の前で待っていた。 花婿の背には、ステンドグラス。 ステンドグラスを通した外の光が、祝福するかのように照らす。 聖歌隊のアベ・マリアの歌声。 響くパイプオルガンの音色。 私は息を飲んでその場面を見守っていた。 花嫁と花嫁の父が通りすぎた。 そして、花婿へと娘を託す花嫁の父。 花嫁の父と固い握手をした花婿は、花嫁をエスコートし、牧師台の前に二人で上がる。 今から、この場にいる全ての人が、二人の誓いを見届ける。 ー讃美歌の合唱がはじまったタイミングだった。 ガシャンッ…… 後ろの扉が勢いよく開き、皆が振り返った。 開いた扉のど真ん中に一人の男性のシルエット。 息を切らせた男性は中に入ってくる。 結婚式には似つかないラフな姿だった。 「ユリ!」 男が呼ぶその名前は、花嫁の名前。 会場スタッフが男をチャペルから出そうと掴もうとするも、その男は振り切って土足でバージンロードを走り、牧師台前へ。 チャペル内がざわつく。 そして花嫁の腕を掴んだ。 「たっくん…」 花嫁がその男の名前を呟いた。 「おい!何してる!?」 花婿が男に問い掛けるも、その男は花嫁を連れて走り出した。 「おいっ!」 花婿が花嫁のベールを掴んだけれど、そのベールはあっけなく外れる。 「…ごめんなさいッ!」 花嫁はその言葉だけを残して、男とバージンロードを走り抜けて出ていく。 「だ、誰か!つ、捕まえろっ!!」 参列の誰かの声で、そこに居た数名の参列者とスタッフが男と花嫁を追う。 「何?どういうこと?」 「えっ?」 「演出?」 「バカ、そんなわけないじゃん。挙式中だよ?」 「えっ?」 チャペル内はざわつき、さっきまでの厳かな雰囲気は一瞬でなくなった。 牧師台の前で、呆然と佇む花婿の足元に、花嫁が残したブーケが落ちていた。 花婿は手にベールを掴んだまま、動かなかった。
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