2. 発覚1週間前

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夜は叔母一家と夕食を共にした。 叔母一家とだけだと思っていたら、新郎一族とも一緒で賑やかな夕食タイム。 ビュッフェのレストランだったから、特に気は遣わないのだけど、両家の仲の良さに驚いた。 叔母夫婦と響ちゃんの弟の久志君しか知らないのに、なぜか私達まで仲良くして貰って、夕食は盛り上がる。 私の前に座った小学生の男の子が可愛くて、会話が弾んだ。 「お姉ちゃん、ちょっと響ちゃんに似てるなぁ。可愛い!」 関西弁で話すその男の子は、新郎さんの甥っ子らしい。 「響ちゃんといとこなの。だから似てるのかもしれない。可愛い?ありがとう」 そう説明すると、男の子は嬉しそうに笑って頷いた。 こんな小さな男の子に可愛いと言って貰えて嬉しい。 「すみません、よく喋る子で…」 男の子のお母さんが私に申し訳なさそうにする。 「いえいえ、楽しいです!」 父は叔父と、新郎のお父さんと盛り上がっていた。 「真白、元気?」 声を掛けられて振り返ると、従弟の久志君。 「元気。また呼び捨て」 「昔からじゃん」 久志君は私より年下のくせに、私を年下扱いする。 「瑠璃さん、体調悪いんだって?」 だけど姉のことは“さん”付けで呼ぶ。 「そう。風邪こじらせたみたいで。母が来れなくてごめんね」 久志君は私の椅子の横でしゃがみ、私の目線まで下りてきた。 「ううん。姉ちゃん、本当は天宮一家を呼びたかったみたいだけど、場所が場所だから叔母さん夫婦だけに声掛けたんだよ。真白が来てくれて喜ぶと思う」 そう言われると嬉しい。 「響ちゃんは?」 「あぁ…それが…」 久志君が言いにくそうにしてると、それを聞いていたのか叔母が側に寄ってきた。 「あの子、まだ北海道に着いてないの」 「えっ!?」 想像しなかった答えが返ってきた。 「どうしても外せない仕事があるとかで、それ終わってからこっちに来るって。蛍君まで巻き添えにして!今、こっちに向かってるところ。呆れるでしょ?」 叔母はおかんむり。 久志君は肩をすくめた。 響ちゃんは大学を卒業してから、大手不動産会社に就職し最前線で働くバリバリのキャリアウーマン。 「響ちゃんしか出来ない仕事を任せて貰ってるんですよ。若いのに最前線で頑張って…偉いと思いますよ」 男の子隣に座っていた、恐らく新郎の母が叔母に言った。 「いえいえ、本当に申し訳なくて…」 「申し訳ないことなんて一個もありませんから。あのこら二人が幸せに楽しく暮らせるのが一番です」 理解のあるお姑さんのようだ。 夕食はワイワイ楽しい一時だった。 響ちゃんと会うのは、明日の楽しみに取っておこうと思っていたけれど、午後9時前にサプライズがあった。 夕食も終えて、ジャグジー風呂にお湯を入れているタイミングで来客を知らせるチャイム。 父は読書タイムで動かない。 私が開けに行くと、そこには響ちゃんと背の高いスラッとした男性の姿。 「響ちゃん!!」 「真白ちゃん、遠くまで来てくれてありがとう。ご挨拶が遅くなってごめんなさい」 響ちゃんはそう言って謝った。 「ううん!全然!会えて嬉しい!」 私の声を聞き付けてか、父がやってきた。 「伯父さんも、遠いところをありがとうございます」 父の姿を見つけて、響ちゃんが言う。 「彼が、夫の蛍です」 響ちゃんが紹介する。 「ご挨拶が遅くなりました失礼をお許しください。国分蛍です。どうぞ宜しくお願い致します」 頭を下げる国分さん。 「響の伯父の天宮です。これは娘の真白ですーー国分さんとは一度電話でお話を…」 父がそう言いかけると、 「あっ、はい。その節は大変お世話になりました」 「いやいや、こちらこそ。姪を守ってくれた君なら安心だと思います。響をどうぞ宜しくお願いしますね」 並ぶ二人を眺めていると、何だかキラキラして見えた。 幸せオーラって本当にあるんだと思った。 「明日会えるんだから、わざわざ挨拶に回らなくてもいいだろ。早く休みなさい」 そう父は言ったけれど、二人は一言お礼だけでもと、参列者の部屋を回っているらしい。 話したいことは沢山あるけれど、それはグッと我慢して二人を見送った。 「お似合いの二人だな」 二人が帰った後、父が言った。 私もそう思った。
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