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夜は叔母一家と夕食を共にした。
叔母一家とだけだと思っていたら、新郎一族とも一緒で賑やかな夕食タイム。
ビュッフェのレストランだったから、特に気は遣わないのだけど、両家の仲の良さに驚いた。
叔母夫婦と響ちゃんの弟の久志君しか知らないのに、なぜか私達まで仲良くして貰って、夕食は盛り上がる。
私の前に座った小学生の男の子が可愛くて、会話が弾んだ。
「お姉ちゃん、ちょっと響ちゃんに似てるなぁ。可愛い!」
関西弁で話すその男の子は、新郎さんの甥っ子らしい。
「響ちゃんといとこなの。だから似てるのかもしれない。可愛い?ありがとう」
そう説明すると、男の子は嬉しそうに笑って頷いた。
こんな小さな男の子に可愛いと言って貰えて嬉しい。
「すみません、よく喋る子で…」
男の子のお母さんが私に申し訳なさそうにする。
「いえいえ、楽しいです!」
父は叔父と、新郎のお父さんと盛り上がっていた。
「真白、元気?」
声を掛けられて振り返ると、従弟の久志君。
「元気。また呼び捨て」
「昔からじゃん」
久志君は私より年下のくせに、私を年下扱いする。
「瑠璃さん、体調悪いんだって?」
だけど姉のことは“さん”付けで呼ぶ。
「そう。風邪こじらせたみたいで。母が来れなくてごめんね」
久志君は私の椅子の横でしゃがみ、私の目線まで下りてきた。
「ううん。姉ちゃん、本当は天宮一家を呼びたかったみたいだけど、場所が場所だから叔母さん夫婦だけに声掛けたんだよ。真白が来てくれて喜ぶと思う」
そう言われると嬉しい。
「響ちゃんは?」
「あぁ…それが…」
久志君が言いにくそうにしてると、それを聞いていたのか叔母が側に寄ってきた。
「あの子、まだ北海道に着いてないの」
「えっ!?」
想像しなかった答えが返ってきた。
「どうしても外せない仕事があるとかで、それ終わってからこっちに来るって。蛍君まで巻き添えにして!今、こっちに向かってるところ。呆れるでしょ?」
叔母はおかんむり。
久志君は肩をすくめた。
響ちゃんは大学を卒業してから、大手不動産会社に就職し最前線で働くバリバリのキャリアウーマン。
「響ちゃんしか出来ない仕事を任せて貰ってるんですよ。若いのに最前線で頑張って…偉いと思いますよ」
男の子隣に座っていた、恐らく新郎の母が叔母に言った。
「いえいえ、本当に申し訳なくて…」
「申し訳ないことなんて一個もありませんから。あのこら二人が幸せに楽しく暮らせるのが一番です」
理解のあるお姑さんのようだ。
夕食はワイワイ楽しい一時だった。
響ちゃんと会うのは、明日の楽しみに取っておこうと思っていたけれど、午後9時前にサプライズがあった。
夕食も終えて、ジャグジー風呂にお湯を入れているタイミングで来客を知らせるチャイム。
父は読書タイムで動かない。
私が開けに行くと、そこには響ちゃんと背の高いスラッとした男性の姿。
「響ちゃん!!」
「真白ちゃん、遠くまで来てくれてありがとう。ご挨拶が遅くなってごめんなさい」
響ちゃんはそう言って謝った。
「ううん!全然!会えて嬉しい!」
私の声を聞き付けてか、父がやってきた。
「伯父さんも、遠いところをありがとうございます」
父の姿を見つけて、響ちゃんが言う。
「彼が、夫の蛍です」
響ちゃんが紹介する。
「ご挨拶が遅くなりました失礼をお許しください。国分蛍です。どうぞ宜しくお願い致します」
頭を下げる国分さん。
「響の伯父の天宮です。これは娘の真白ですーー国分さんとは一度電話でお話を…」
父がそう言いかけると、
「あっ、はい。その節は大変お世話になりました」
「いやいや、こちらこそ。姪を守ってくれた君なら安心だと思います。響をどうぞ宜しくお願いしますね」
並ぶ二人を眺めていると、何だかキラキラして見えた。
幸せオーラって本当にあるんだと思った。
「明日会えるんだから、わざわざ挨拶に回らなくてもいいだろ。早く休みなさい」
そう父は言ったけれど、二人は一言お礼だけでもと、参列者の部屋を回っているらしい。
話したいことは沢山あるけれど、それはグッと我慢して二人を見送った。
「お似合いの二人だな」
二人が帰った後、父が言った。
私もそう思った。
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