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翌日、結婚式は森の中にある近代的なチャペルで執り行われた。
母の手配通り、私は振袖を着て、葉山一家の後ろの席に父と並んで座った。
驚いたのは参列者のメンバー。
リゾートウェディングと聞いていたから、親族だけの慎ましやかな式だと思っていたのに、友人の参列があった。
久志君に聞けば、場所が場所なだけに招待しないつもりだった友人達が、呼ばれないなんて有り得ないと駆け付けたメンバーらしい。
響ちゃんは昔から人望もあった。
それは国分蛍さんも同じらしい。
私の後ろに座る友人達は、きっと響ちゃんを大切に想う人ばかりなんだろう。
「ちょっと、花!ちゃんと大人しく座ってなさい!」
後ろの女性が小声で席から前を覗くドレス姿の小さな女の子を注意した。
女の子は、前の前面ガラスの向こうにある湖が気になる様子。
「ママ、おみじゅにおさかないるかなぁ?」
「いるかもね。そこから前を覗かないの。アナタ、花を見てて」
「あの湖に魚はいないだろ」
隣で突っ込むご主人に女の子を抱き上げて渡していた。
「すみません、煩くして」
謝る女性に私は大丈夫と手を小さく振った。
後ろでは泣き叫ぶ赤ん坊をあやす夫婦の姿もあった。
コンクリートで出来たチャペルは赤ん坊の泣き声がよく響く。
挙式がはじまるまでに泣き止むだろうか…
心配して間もなく、新郎側の参列者の女性があやす夫婦に何か言うと、ご主人が赤ちゃんを抱いて出て行った。
注意してくれた?
女性はスタスタと歩いて新郎側の席に戻って行き、あやしていたママはこちらの席に来て、叔母に声を掛ける。
「おばさん、煩くしてすみません」
「いいのよ、佳世子ちゃん。赤ちゃんは泣くのが仕事だから。ご主人、赤ちゃんと外に出たの?大丈夫?」
「はい。泣き止んだら戻ってきます。会社の先輩がそうした方がいいって教えてくださって」
「配慮してくださったのね。気を遣わせてごめんね」
そんな会話が繰り広げられていると、スタッフに声を掛けられ、間もなく挙式がはじまることが告げられた。
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