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「えッッ!?それで!?」
「どうなったの!?」
実家のリビングのローテーブルを母と姉の瑠璃(るり)がさっきの惨事の続きを聞きたがる。
「花婿側の親族は大激怒。花嫁のおばあちゃんはショックで倒れて救急車。花嫁の母はその付き添いで消えて、花嫁の父は誘拐だとか何とかで警察を呼べって」
私は、頭の髪飾りを取りながら話を続けた。
「警察呼んだの!?」
「まさか。無理やり連れてかれたわけじゃないし。あんなので呼んだら恥の上塗りだよ」
取り外した髪飾りをテーブルの上に置き、朝からへアセットして貰った髪をほどいて解放した。
「それで?」
「ご馳走食べて、ご祝儀返して貰って帰ってきた」
母の入れてくれていたお茶を飲む。
「食事中に久米っちのご両親が、謝罪しながらご祝儀返しに来たの。花嫁の父も謝罪に回ってたよ」
「そんな状態でよく食べられたわね…」
姉が引いていた。
「いや、だって!食事には罪ないし、食べて帰って下さいなスタンスだったから」
「どんな雰囲気の食事よ…」
「親族は親以外、居なかったよ。静な食事会的な?お通夜みたいなのに、みんな格好が華やかでシュールだったよ」
私はそう言って笑ってみたが、母も姉もドン引きだった。
「久米君…大丈夫なの?」
今日は、地元の幼馴染久米大地(くめ だいち)の結婚式だった。
姉も母も、幼稚園の時から久米を知っている。
「矢沢がフォローするって」
矢沢貴俊(やざわ たかとし)も幼稚園からの幼馴染の男友達。
「私と優樹菜は女子だし、帰ってきた」
藤川優樹菜(ふじかわ ゆきな)も幼馴染。
「映画卒業さながらね…」
母がポツリと言う。
「何それ?」
わからなくて聞いてみた。
「昔の映画よ。知らないの?」
母が驚く。
「あれでしょ?挙式中に男が花嫁をかっさらう話」
姉がテーブルのお茶菓子を選びながら応える。
「そう!お互い愛し合ってたのに、別の男性と結婚しようとするのよ。でも、彼が教会に現れて二人で逃げるの!」
母は青春を思い出すようにうっとりと語る。
「実際そんなことしたら、略取・誘拐の罪だからね。逮捕監禁罪だよ」
姉は選んだお菓子の袋を開けて食べながら言う。
「彼女は誘拐されたんじゃないの!自ら彼を選んだの!」
ムキになる母。
「じゃ、婚姻の予約を不当に破棄した二人には、新郎が被った精神的苦痛に対しては責任を負うべきね。目撃者は招待客、言い逃れは出来ない」
姉はそう話してボリボリとおかきを食べた。
「ラブロマンスに法律を絡めないで」
母は姉に反発。
姉の職業は元裁判所書記官。
結婚を機に退職している。
「久米っちは慰謝料、結婚式に向けて費やした費用、中止によって被った損害を損害賠償請求出来る」
私の意見に姉も頷いた。
私の職業は弁護士事務所の事務員。
それなりに、法の知識も頭にある。
「あなた達、すぐそうやって…お父さんと一緒ね」
不満そうな母。
父は弁護士をしている。
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