1. 発覚1ヶ月前

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「えッッ!?それで!?」 「どうなったの!?」 実家のリビングのローテーブルを母と姉の瑠璃(るり)がさっきの惨事の続きを聞きたがる。 「花婿側の親族は大激怒。花嫁のおばあちゃんはショックで倒れて救急車。花嫁の母はその付き添いで消えて、花嫁の父は誘拐だとか何とかで警察を呼べって」 私は、頭の髪飾りを取りながら話を続けた。 「警察呼んだの!?」 「まさか。無理やり連れてかれたわけじゃないし。あんなので呼んだら恥の上塗りだよ」 取り外した髪飾りをテーブルの上に置き、朝からへアセットして貰った髪をほどいて解放した。 「それで?」 「ご馳走食べて、ご祝儀返して貰って帰ってきた」 母の入れてくれていたお茶を飲む。 「食事中に久米っちのご両親が、謝罪しながらご祝儀返しに来たの。花嫁の父も謝罪に回ってたよ」 「そんな状態でよく食べられたわね…」 姉が引いていた。 「いや、だって!食事には罪ないし、食べて帰って下さいなスタンスだったから」 「どんな雰囲気の食事よ…」 「親族は親以外、居なかったよ。静な食事会的な?お通夜みたいなのに、みんな格好が華やかでシュールだったよ」 私はそう言って笑ってみたが、母も姉もドン引きだった。 「久米君…大丈夫なの?」 今日は、地元の幼馴染久米大地(くめ だいち)の結婚式だった。 姉も母も、幼稚園の時から久米を知っている。 「矢沢がフォローするって」 矢沢貴俊(やざわ たかとし)も幼稚園からの幼馴染の男友達。 「私と優樹菜は女子だし、帰ってきた」 藤川優樹菜(ふじかわ ゆきな)も幼馴染。 「映画卒業さながらね…」 母がポツリと言う。 「何それ?」 わからなくて聞いてみた。 「昔の映画よ。知らないの?」 母が驚く。 「あれでしょ?挙式中に男が花嫁をかっさらう話」 姉がテーブルのお茶菓子を選びながら応える。 「そう!お互い愛し合ってたのに、別の男性と結婚しようとするのよ。でも、彼が教会に現れて二人で逃げるの!」 母は青春を思い出すようにうっとりと語る。 「実際そんなことしたら、略取・誘拐の罪だからね。逮捕監禁罪だよ」 姉は選んだお菓子の袋を開けて食べながら言う。 「彼女は誘拐されたんじゃないの!自ら彼を選んだの!」 ムキになる母。 「じゃ、婚姻の予約を不当に破棄した二人には、新郎が被った精神的苦痛に対しては責任を負うべきね。目撃者は招待客、言い逃れは出来ない」 姉はそう話してボリボリとおかきを食べた。 「ラブロマンスに法律を絡めないで」 母は姉に反発。 姉の職業は元裁判所書記官。 結婚を機に退職している。 「久米っちは慰謝料、結婚式に向けて費やした費用、中止によって被った損害を損害賠償請求出来る」 私の意見に姉も頷いた。 私の職業は弁護士事務所の事務員。 それなりに、法の知識も頭にある。 「あなた達、すぐそうやって…お父さんと一緒ね」 不満そうな母。 父は弁護士をしている。
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