4. カミングアウト

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「……子供?」 頭の中で、恭ちゃんの言葉を理解しようとするけれど、消化できない。 包帯を巻いた手からも伝わる、恭ちゃんの手の冷たさと震え。 それが冗談ではないことを物語っていた。 「…子供なんて……出来てないよ。私、今月も生理きたし…」 恭ちゃんが命を授かる行為を、私以外の人としてるわけがない。 そう思う自分が、そう言葉にする。 「うん…」 恭ちゃんが私の手を握る。 「真白じゃ…ない」 下を向いたまま、恭ちゃんは言った。 私じゃない…? 子供……? 胸が痛いくらいに鼓動している。 「…私とじゃ…ない人の…子?」 息が吸えなくて、上手く話せない。 下を向いたまま、小さく頷く彼。 ポタン、ポタン、とシンクに跳ねる水滴の音。 下を向いたままの彼の頭をぼんやりと眺めていた。 嫌でも言葉の意味を理解する。 視界が揺れて、ぼやける。 目の奥、鼻の奥が熱くて痛い。 「嘘だよ…」 ポツリと出た言葉と共に、涙がこぼれた。 「嘘だよね…!?嘘だよ、嘘だよ!!」 恭ちゃんに問い掛けながら、自分にも言い聞かせるように叫んだ。 身体中が熱くなる。 「冗談だよね!?違うよね!?酷い嘘だよね!?」 恭ちゃんの腕を揺さぶって問い掛ける。 恭ちゃんは辛そうな顔で私を見て、首を横に振る。 夢ならここで覚めてほしい。
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