1. 発覚1ヶ月前

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母が持たせてくれたおかずで夕食を済ませ、私は恭ちゃんと一緒にお風呂に入った。 やや狭めのセパレートタイプのお風呂場。 湯槽に二人で入ると、少しのお湯でもいっぱいになる。 彼が浴槽に入って、彼に背を向けるようにして私も入る。 「やっぱり狭いな」 「5年前から知ってるよ」 そう言って二人でクスクス笑う。 二人で入る、お風呂の時間が好き。 何だかとっても幸せに感じる。 彼に背を向けているのに、狭いお風呂場に響く彼の低い声とか、密着感とか、そんなのが私を麻痺させて素直にさせてくれる。 何でも話せてしまう。 「前から話してるけど、そろそろ引っ越さない?」 「う~ん…」 「前はさ、真白にだいぶ負担掛けてたけど、これからは俺が今までの分も返す気持ちで出したいし。もう少しいいとこに住まない?」 出逢った時はまだ恭ちゃんは美容師になりたてで、一緒に暮らしはじめた時も、私よりお給料が少なかった。 だから、私の方が生活費を多く出していたけれど、この6年で彼はチーフディレクターまでのぼりつめ、お店の副店長も任されている。 いつのタイミングでだったかはわからないけれど、私の貰っているお給料をはるかに超えているのは気付いていた。 「恭ちゃんの仕事場から少し遠いもんね…」 「いや、別に遠いのはいいんだけど。このハイツも築20年だし、風呂も狭いし」 「お風呂が狭いのは気にならない」 「まぁ、別にいいんだけど。もう少し都心に近付くとか!」 「それは便利かもね」 「だろ?」 今で不自由してるわけではない。 お隣も、階下のご近所さんもみんないい人。 古めだけど、大家さんが親切で小綺麗にしてあるし、不便もない。 だけど…恭ちゃんは違うのかもしれない。 「家捜すの大変だよ?」 後ろを振り返って彼を見た。 「俺が頑張るから」 力強くそう言う恭ちゃんの言葉が、頼もしくもある。 「…うん」 頷くと恭ちゃんは嬉しそうにガッツポーズした。 その動作でお湯が跳ねて私の顔面にお湯がかかった。 「ごめん」 素直に謝る彼。 笑ってしまう。
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