1. 発覚1ヶ月前

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一瞬、恭ちゃんの顔が強張った気がした。 「あっ、ごめん。結婚したいって意味じゃないよ?」 フォローして、恭ちゃんの胸に視線を落とした。 「真白…」 「うん?」 「もしかしたら…店長任されるかもしれない」 「えっ!?」 私は驚いて恭ちゃんを見る。 「すっ、すごい!」 彼がアルバイトの時からお世話になっているお店は、掛け持ちのアルバイト時代を含めて12年の付き合いになる。 都内に2店舗しかなかったお店が、今は9店舗になり、会社事態も大きくなっていた。 「代表に、経営にも興味ないかって声掛けて貰ってる」 私はビックリして声を詰まらせる。 「すごいよ!えーっ!スゴすぎる!良かったね、恭ちゃん!!」 彼は代表(経営者)のことを尊敬して、憧れて今のサロンに飛び込んだ。 その代表から声を掛けて貰えるなんて、夢が叶ったと一緒のことだ。 「おめでとう!恭ちゃん!!」 「まだ決まったわけじゃないよ」 「声掛かるだけでもすごいことだよ!」 彼が下積み時代から努力して今のポジションに居ることは、外から見守ってきた私なりに知ってるつもりだ。 「やったね、恭ちゃん!」 「あ、ありがとう」 少し照れてる。 「真白」 「うん?」 「だから、それが落ち着くまで、結婚は待ってくれない?考えてないわけじゃないんだけど、今のチャンスに全力で挑みたい」 彼の気持ちは理解できる。 「もちろんだよ」 そう言って彼の胸に顔を埋めた。 「気にしないで、お仕事に専念してね」 そう言うと、恭ちゃんは私をギュッと抱き締めた。 「真白、愛してる」 そう耳元で囁いてくれた。 私と恭ちゃんは、その日久々に肌を重ねた。 お互いに忙しくて…特に恭ちゃんが忙しくて、生活のスレ違いがある週も多い。 だけど、一緒に過ごせる時は密に時間を共にしていた。 築20年のお風呂の狭い1LDK。 台所の蛇口はキュッと閉めてるのに、なぜかポタポタゆっくり水滴が落ちる。 その音も、いつか生活音の一部になって、なんだか心地いい。 ベランダの窓が日によって開けにくかったり、近所のおじさんのくしゃみがやたらと大きくて必ず聞こえたり… そんな小さなことも、恭ちゃんとの生活の中で一部になって楽しんでいた。 私は、幸せだった。
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