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翌朝、キッチンで朝食を作っていると、恭ちゃんが起きてきた。
普段の出勤は、9時始業の私が早くて、私が家を出る時恭ちゃんは夢の中。
彼のお店は11時オープンで、大体10時半に着くように家を出ていた。
いつも朝食は作って置いて出る。
「おはよ、早いね」
まだ眠そうにやって来て冷蔵庫から牛乳を出す恭ちゃんを横目に、私は目玉焼きを作っていた。
「おはよ。今日、本部で会議なんだよ」
そう言って大きなあくびをしながら、マグカップを出して牛乳を注ぐ恭ちゃん。
「ホットミルク?温めようか?」
ミルクパンを出そうと棚に手を伸ばす。
「いや、いい!電子レンジ君がいい仕事してくれるから」
彼はそう言って、電子レンジにマグカップを入れて温めをスタートさせる。
この電子レンジも、同棲をはじめたタイミングで買ったもの。
当時そのお店で1番安い電子レンジにした。
だからってわけではないけれど…
「それで温めたら、温まりにむらが出ない?」
それがイヤで私はいつもミルクパンで温める。
「気にしない」
恭ちゃんはそう言って、温めたマグカップを電子レンジから取り出す。
「何か、手伝おうか?」
「大丈夫。もうすぐ出来るから、座ってて」
私は目玉焼きを、サラダとパンがのったお皿に合い盛りする。
「真白はオレンジジュース?」
「あっ、うん。ありがとう」
恭ちゃんは私の分のコップを出して、冷蔵庫からオレンジジュースを出し、注いでくれた。
彼は飲み物とカトラリーを、私は出来上がった朝食のお皿をそれぞれ持って、リビングのローテーブルにセッティング。
ダイニングテーブルはなく、リビングのローテーブルでいつも食事をする。
リビングにはテレビと二人掛けのソファ、そして木製の棚しか置いていないシンプルな部屋。
真四角のローテーブルに隣同士の辺に座る。
「じゃ、一緒に」
二人で手を合わせて、
「せーの」
と声を掛けて一緒に、
「いただきます」
と言う。
「あっ、そうだ。来月の11日なんだけど」
食べ始めたタイミングで、恭ちゃんが思い出したように言い出した。
「11日?日曜日?」
「うん。ちょっと出張になるかも」
「出張?珍しいね。どこに?」
「名古屋か大阪。代表とかと一緒に。地方に店出す計画があるみたいで」
私はカレンダーを見た。
「11日何かあったような…」
「マジで?」
「何だったかな…」
よく考えて、昨日の母達との会話を思い出した。
「あっ、私は関係ないや。従姉の結婚式だった」
響ちゃんの結婚式だった。
「えっ?行かなくていいの?」
「うちからは、両親が呼ばれてるみたいだから」
電報は打っておこうと、忘れないように私は鞄から手帳を出して、響ちゃんの結婚式と恭ちゃんの出張を書き込んだ。
「まだちょっと先だな」
「1ヶ月なんてすぐだからさ」
そう言って、恭ちゃんは笑った。
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