18. 告白

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萩山麗美が異変にパニックを起こした。 恭ちゃんを離さなかった。 その状況は、付き添わなきゃならないほどのものだったんだろうか。 「真白、顔色が悪い。大丈夫?」 私を覗き込み心配する恭ちゃん。 肩を抱かれて、近くのベンチに座るように促された。 「代表は大阪から向かってるんですか?」 細川君が恭ちゃんに問い掛ける。 「いや、もうこっちに戻ってる途中だったみたいで、電話した時は品川駅にもうすぐ着くって行ってたから…」 「じゃぁ、直ぐに来て貰えますね」 私だけがベンチに座り、床に視線を落としていた。 恭ちゃんと細川君の足元をボーッと眺める。 萩山麗美が異変にパニックを起こした…。 恭ちゃんを離さなかった…。 …どうして? …どうして振り払ってくれないの? 「なんで…」 消え入りそうな声を発した私のその声を、彼は聞き逃さなかった。 私の所へ視線が降りてくる。 「…なんで、振り払ってくれなかったの……」 ギュッと拳を握って、振り絞る声で問い掛ける。 「真白―」 「墨ッ!!」 恭ちゃんが私を呼んだタイミングで、恭ちゃんを呼ぶ声が聞こえた。 走り寄って来たのは、息を切らせた新城代表だった。 「麗美は!?」 「大丈夫です」 「赤ん坊も無事か!?」 「…はい」 恭ちゃんに物凄い勢いで問い掛け、恭ちゃんの返答を聞くとホッとしたように息をついた。 「…良かった」 目の前で安堵の表情を見せる新城代表。 いつも強気な経営者の彼が、一人の兄の顔をしていた。 「墨、ありがとう。細川もありがとう」 新城代表は二人にお礼を言い、ベンチに座る私の姿を捉えた。 「真白ちゃんも?…ありがとう」 状況がよくわかっていない様子で、新城代表は私にもお礼を言った。 「代表、身内が来たら看護師さんが話をしたいって」 「よし、聞こう。案内してくれ」 恭ちゃんが言うと新城代表はそう言って、動き出す。 恭ちゃんはすぐ戻ると声を掛けて、新城代表を案内して行った。 残った私と細川君。 新城代表の様子に、全く感じていなかった罪悪感のようなものを感じた。 私は、自分のことばかりで、一切萩山麗美のことも、その胎児のことも考えていなかった。 恭ちゃんが付き添った事実ばかりにとらわれていた。 「真白さん…」 ベンチに座る私の横に、細川君は座りながら声を掛けてきた。 「あの、真白さん!救急車に墨さんが乗らざるを得ない状況だったんです!麗美さんパニックになって泣き叫びだして“助けて”って“赤ちゃんがどうにかなったらたえられない”って“どうしよう、どうしよう”って…」 「…うん」 「救急車待ってる間も墨さんが離れようとすると、泣き出して…他の女性スタッフを付き添わせられなかったんです」 「……うん」 痛いくらいに拳を握った。 どうにか気持ちを抑えたくて。 「麗美さんの墨さんへの様子を見て、今日のスタッフのメンバーが何か思ったかもしれません…。それくらい、墨さんに頼るような…“墨君、助けて…”って…」 唇を噛み締めて、仕方のない状況だったんだと理解しようと必死で頷いた。 色んな感情が渦巻いていた。
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