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落ちてはいけない
アスカがダイスを振ると、4が出た。4マス進んだ先には飛行機のマーク。
『避けまくれ! 障害物飛行レース! こちらのマスでは、飛行機の上に乗って、このフィールドを一周してもらいます。ルールはただ一つ。落ちないこと!』
マスがモコモコと盛り上がり、小型飛行機に形を変えた。僕たちはその飛行機の上にいる。
「どうやって乗るの?」
『もう乗っているではありませんか』
え?
飛行機は一気に上昇した。僕もアスカも飛行機の羽に必死にしがみついた。
「飛行機の上に乗るってそういうこと〜!?」
アスカが目を瞑って叫んでいる。頬の横を何かが通り過ぎた。鳥だ。前から鳥の大群が押し寄せてくる。いや、僕らが向かってるんだ!
「アスカ! 鳥に気をつけて!」
「え? とり肉?」
「鳥に! きをつけて!」
言い終えた時、鳥の大群に突っ込んだ。バタバタと体にぶつかる鳥、鳥、鳥。しばらく鳥の猛攻が続いたが、それもだんだんとなくなった。アスカと目が合う。
「ユウト、杖が……」
アスカの視線を追うと、楔形になった飛行機の尾に魔法の杖が辛うじて引っかかっている。
「僕が取ってくる」
掴んでいた羽から、機体本体に乗り移り機体の後方へ滑っていった。両足で尾を挟み、上体を持ち上げて、杖に手を伸ばす。あと、少しのところで手が届かない。左足を外して、立ち上がった。杖を掴むと同時に体がぐるんとまわり倒れてしまった。かろうじて右足だけが引っかかっている。
「ユウト大丈夫ー?」
アスカの声が風に乗って聞こえてくる。杖を振って答えた。
「なんとかー」
あたりが真っ白になって、少し肌寒くなった。
「雲に入っちゃったみたい、今行くから待ってて」
この世界、雲もあるのか。ん、来るって?
「来なくていいよ! 危ないから」
上体を起こして前に戻ろうとした時、何かが顔に当たって、足が外れてしまった。ブワッと体が浮き、尾を掴もうとした手は空を切った。
「ユウト!」
雲が晴れ、アスカが現れた。僕の手をがっしりと掴んでいる。しかしその拍子に杖を落としてしまった。空に揺れる体はゆっくりと機体に落ち着き、機体は下降していった。
「ごめん、杖落としちゃった」
アスカはうんとだけ頷いた。機体がマスに降り立ち、飛行機はマスの柄に戻った。杖をアスカに返すと、案内の声が響いた。
『おめでとうございます! ゲームクリアです! ご褒美として、強力なスケットを追加します!』
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