2人が本棚に入れています
本棚に追加
僕たち3人は、家の近所の公園にきた。住宅に挟まれたこの公園で、何度かボールを住宅に打ち込んでしまったことがある。今まで窓ガラスを割ったことがないのが不幸中の幸いだ。ゴールは鉄棒と雲梯。雲梯はゴールが広いから僕とチームを組んだヒロがキーパーについた。
ボールを地面に置いて、軽くこっちに転がした。
「3点先取ね、そっちからでいいよ」
僕は、舐められている。
「いいよ、そっちからで。そのかわり、僕が勝ったら、帰ってもいい?」
ボールを突き返した。
「いいよ、勝たせないから」
アスカの目つきが変わったかと思えば、華麗なフェイントを見せてあっさり僕を抜き去った。ヒロがアスカにめがけて突っ込んでいく。落ち着いて足を一旦止めたアスカはループシュートで雲梯にゴールを決めた。ヒロはそのままの勢いで、アスカの前に転がった。
「うまいなぁアスカ」
少し嬉しそうに、アスカはボールを取りに歩く。
「手加減しようか? 右足使わないで相手したげるよ」
「ええ! いいの!」
ヒロは素直に喜ぶが、舐められて悔しくはないのか。
「いいよ、手加減なんかいらない」
僕はそう答えてヒロの元へ駆け寄る。
「なんでさユウト〜、手加減してもらえなきゃ勝負にならないよ」
「大丈夫、こっちは二人いるんだぞ」
アスカに聞かれないように、作戦会議をして僕らのコートの真ん中に戻った。
「はい、そっちボールね。手加減しないよ?」
「ok、はじめるよ」
転がってきたボールをトラップして、前に進むフェイントを一瞬かけて後ろに転がした。ヒロへのパスにすぐに対応したアスカはヒロの元へ向かって走る。
「ユウト!」
ヒロへのパスをダイレクトでまた、ヒロがパスした。アスカの頭を超えて、僕の目の前に落ちてきたボールを、全力でゴールに叩き込んだ。ボールは鉄棒の内側に当たって、跳ね返りながらもゴールを決めた。
「イェーイ!」
1回も触らせずにゴールできた。この調子であと2点、早く帰らなきゃ。
「作戦勝ちだね」
ヒロとハイタッチして、アスカを見る。この完全敗北にどんな顔をしているか、と思ったが期待していた顔ではなかった。アスカはどこか一点を見つめて、苦い顔をしている。
「ボールが……」
ポツリと呟いた。アスカの見ている方を見ると、破れたフェンスの穴からボールが隣の敷地に入っていく。
最初のコメントを投稿しよう!