遊びの誘い

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 僕たち3人は、家の近所の公園にきた。住宅に挟まれたこの公園で、何度かボールを住宅に打ち込んでしまったことがある。今まで窓ガラスを割ったことがないのが不幸中の幸いだ。ゴールは鉄棒と雲梯。雲梯はゴールが広いから僕とチームを組んだヒロがキーパーについた。 ボールを地面に置いて、軽くこっちに転がした。 「3点先取ね、そっちからでいいよ」 僕は、舐められている。 「いいよ、そっちからで。そのかわり、僕が勝ったら、帰ってもいい?」 ボールを突き返した。 「いいよ、勝たせないから」 アスカの目つきが変わったかと思えば、華麗なフェイントを見せてあっさり僕を抜き去った。ヒロがアスカにめがけて突っ込んでいく。落ち着いて足を一旦止めたアスカはループシュートで雲梯にゴールを決めた。ヒロはそのままの勢いで、アスカの前に転がった。 「うまいなぁアスカ」 少し嬉しそうに、アスカはボールを取りに歩く。 「手加減しようか? 右足使わないで相手したげるよ」 「ええ! いいの!」 ヒロは素直に喜ぶが、舐められて悔しくはないのか。 「いいよ、手加減なんかいらない」 僕はそう答えてヒロの元へ駆け寄る。 「なんでさユウト〜、手加減してもらえなきゃ勝負にならないよ」 「大丈夫、こっちは二人いるんだぞ」 アスカに聞かれないように、作戦会議をして僕らのコートの真ん中に戻った。 「はい、そっちボールね。手加減しないよ?」 「ok、はじめるよ」 転がってきたボールをトラップして、前に進むフェイントを一瞬かけて後ろに転がした。ヒロへのパスにすぐに対応したアスカはヒロの元へ向かって走る。 「ユウト!」 ヒロへのパスをダイレクトでまた、ヒロがパスした。アスカの頭を超えて、僕の目の前に落ちてきたボールを、全力でゴールに叩き込んだ。ボールは鉄棒の内側に当たって、跳ね返りながらもゴールを決めた。 「イェーイ!」 1回も触らせずにゴールできた。この調子であと2点、早く帰らなきゃ。 「作戦勝ちだね」 ヒロとハイタッチして、アスカを見る。この完全敗北にどんな顔をしているか、と思ったが期待していた顔ではなかった。アスカはどこか一点を見つめて、苦い顔をしている。 「ボールが……」 ポツリと呟いた。アスカの見ている方を見ると、破れたフェンスの穴からボールが隣の敷地に入っていく。
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