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僕はダイスをふった。手から離れたダイスはモコモコと大きくなり、地面につくときには僕の半分くらいの大きさになっていた。六が出た。一箇所だけ開けた道が青白く光り、進めと示しているようだった。ダイスがまた元のサイズに戻る。僕がダイスを拾っているうちにアスカはもう先に進んでいた。アスカを追って後についていった。
道はスタート地点と同じような円形の地が連なっていて、六個目の円で光りは止まっていた。その円には、剣と盾の模様が描かれている。空からモニターが降りてきて、機械音声が案内を始めた。まるでこの世界には僕とアスカしかいないみたいに、世界全体から聞こえてくる。実際、本当にこの世界には僕らしかいないのかもしれない。
『このマスでは、一人一つ武器を獲得できます。選べる武器は次の通りです。伝説の剣、鉄壁の盾、魔法の杖』
「じゃあ私、魔法の杖!」
アスカが即答。
「じゃあ僕は鉄壁の盾」
「たて!? 盾でどうやって敵倒すのよ!」
「やられなければ負けないだろ」
はーっと、アスカが呆れた顔をした。良いじゃないか、アスカが魔法の杖で攻撃できるなら僕がアスカを守りながら戦えば。むやみに突っ込んでもやられる。こういうのはバランスが大事なんだ。
モニターに盾と杖が映し出される。
『承知しました。アスカ様には魔法の杖を、ユウト様には鉄壁の盾を差し上げます。伝説の剣は、ヒロ様へと送られます』
「あ、良かった。剣はヒロのとこに行くんだ。ってことはヒロも戦うってこと?」
その質問に答えることなく、モニターが土の中へと消えた。
僕らの前に、光を放つ球体が現れた。それが二つに分かれると、それぞれ正体を現した。銀色の丸い盾。中心に大きな半球体があって、その周囲にも等間隔に半球体がデザインされている。僕はそれを手に取るとびっくりするほど軽かった。見た目は鉄なのに、重さはプラスチックみたいだ。同時に出てきた茶色い皮の帯を使って肩にかけた。アスカの方は、持ち手にブルーのサファイアが埋め込まれたまっすぐな杖で、片手で軽く振れる長さだった。てっきり、もっと古くて骨ばった枝が出てくるのかと思っていた。アスカも早速それを手に取って喜んで振り回している。
「うわぁ〜、魔法使えるのかな? えい、えい」
「うわっこっち向けて振んないでよ」
「何もおこんない」
ショボンとした顔で杖を見つめた。
『武器が使えるのは武器使用可能エリアのみとなります』
また案内の音声が響いてくる。常に僕たちを見ているんだ。
「なんだ〜」
ガックリと肩を落とし、杖を腰のベルトに挿す。
「じゃ、今度は私がダイス振っていい?」
アスカの出した手に、ダイスを渡した。
「そりゃ」
勢いよく振ったダイスは再び大きくなり転がった。出た目はスターだった。
「なにこれ」
振った本人が目を丸くしてダイスを見つめる。
「こんな目あったっけ?」
その質問に呼応するようにまた声が聞こえてきた。
『スターは稀に出現します。スターに止まった場合、一〜六の好きな数字を選ぶことができます』
「ほー! じゃあ……ろ||」
「ちょっとまって!」
六と言いかけたアスカをすんでのところで止めた。
「ゴールまでになるべく装備を整えないといけないから、こまめに進もう」
「あそっか、急がないほうがいいのか。じゃ||」
「あ、でもっ!」
「一! え? なに?」
しくじった。先に言っておけばよかった。ダイスの目が一に変わる。
「あぁ〜」
次のマスを指差した。
「見るからに嫌な予感」
次のマスには大きくバツが書いてあるのだ。
「あっ……もう早く言ってよ!」
「仕方ないよもう。進もう」
バツの書いてあるところで止まる。
『このマスは、コイン没収マスとなります。お二人は現在コインを持っていないので、没収はありません』
ふっと肩から力が抜けた。
「良かった〜、次からは慎重に行こう。慎重に」
「そうね」
うなずきながら、アスカがダイスを渡した。
僕がまた、ダイスを振る。
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