ゾンビランド

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 角を曲がって先へ進むと、道幅が広がった。大きな腐りかけの木箱がいくつかあり、通れる道自体はそんなに広くはない。木箱の後ろにも警戒しながら進んだ。進むにつれて道は狭くなり、木箱も減っていった。30mくらい歩いてきたけど、ゾンビの気配はしない。気を張っているのが疲れてきた。並んで歩くのがキツイくらい道が狭くなった時、後ろから木箱が壊れる音がした。 「え? なんか音した……」 ゾンビの声が響いてきたかと思うと、続々と木箱の壊れる音が響いてきた。 「きた!」 ゾンビは木箱の中に隠れていたんだ。アスカが銃で後方をでたらめに撃つ。偶々当たったゾンビが発光し、周囲のゾンビを照らす。その光を頼りに撃ちまくるけれど、続々とやってくるゾンビに押されている。 「だめだアスカ、追いつかれる!」 もう目の前まで迫ったゾンビが光ったその後ろから、手が伸びてきてアスカの手をつかんだ。 「あっ……」 僕は掴まれていないアスカの手を取って走り出した。ぐっと走り出した足が引き止められる。ゾンビの引く力に負けてアスカと手が離れてしまった。アスカの頭にゾンビの手が触れた瞬間、アスカの体が光だし、消えた。銃の落ちる音が響く。勝利を宣言するようにゾンビが雄叫びをあげ、僕に迫ってきた。攻撃手段のない僕はただ逃げるしかなかい。なんでアスカは消えた。どこへいった? 分からないことが頭の中をぐるぐると回る。二股に行き着いたが迷っている暇はない。左に走った。脇腹が痛い。もう後ろにゾンビがいるかどうかも分からない。でも進むしかない。立ち止まって襲われたら終わりだ。だんだんと辺りには松明が灯りだし、持っていた松明を捨てた。 少し広いところに出ると車が一台置いてある。乗れってことかな……でも運転なんてできない。いや、そんなこと考えている暇はない。ゾンビの声が響いてきた。急いで運転席に乗って盾を助手席に置いた。ハンドルに手形がある。手形の通りに握ってみる。ブルンッとエンジンがかかる。全身に車の振動を感じる。車が大きな衝撃を受けて少し傾いた。ゾンビが、きた。アクセルペダルも、ギアもない。ただハンドルを握って、よく分からない力で動くことを祈るしかない。額に汗が吹き出る。動け、動け、うごけ! 前から来たゾンビと目があった気がした。囲まれたんだ。もう逃がさない、そう言われている気がする。ぐん! と体が後ろに引きつけられたかと思うと、車が急発進した。前にいたゾンビを吹き飛ばし進んでいく。真っ暗だった目の前がライトで照らされる。ゴツゴツとした道。周りは木々で覆われている。ハンドルはきかない。だんだんと舗装された道になり、行き止まりの広場について車が止まった。ゾンビはもう完全に振り切ったはず。 地響きとともに、広場がぐんぐん上昇していった。ゾンビランドに来た時みたいにすごい勢いで登っていく。終わったんだ。周囲が明るくなり、体がふわっと浮いた。また元の場所に帰ってきた。 『ゲームクリア〜! おめでとうございます』 例の機械音声が聞こえる。車がすうっと消え、僕は尻餅をついた。盾を拾いながら聞いた。 「アスカは?」 『アスカ様はゾンビに頭部が触れられたのでゲームオーバーとなりました』 「聞いてないよそんなルール」 『…………失念しておりました。本来、ここでボードゲームからもゲームオーバーとなるはずでしたが、こちらのミスなのでアスカ様、復活いたします』 そんなことある!? 僕の隣にすうっとアスカが現れた。あの時僕が手を離した時の格好で。 「アスカ」 「あれユウト、ゾンビは……?」 まだ怯えているのか、混乱しているのかアスカの顔はこわばっていた。 「終わったよ。クリアしたんだ」 ふっと緊張が解けたように力が抜けたみたいだ。 「よかった……ごめん最後捕まっちゃって」 「いいよ、結果オーライ」 本当に謝らなきゃいけないのは僕の方だ。 「俺もごめん。手離して」 「いいよ、結果オーライ」 アスカがにこっと笑った。 『お二人が獲得したコインは二十二枚となります。そのうち二十枚を使って、道中に落とした銃を常備できるようになります。いかがいたしますか?』 空気を読んだようなタイミングで案内を始めた。 「どうしようか」 「そのコインってこの先も使うの?」 『使うことで容易にマスのゲームをクリアしたり、ボス戦での戦闘に使える武器を買える場合もあります』 「場合もあります、か〜」 悩みどころだ。ここで買えば確実に武器は増えるけど、この先のコインの重要性が全く分からない。二十コインが高いのか、安いのか。そもそもこの先にコインを使うシーンは来ないかもしれない……。でも今買うと本当に大事な時に使えなくなるかもしれない……。 「買っとこ」 アスカが軽く言った。分からないことを考えても意味がない。 「……うん、じゃあ買います」 『承知しました』 光の玉が出現し、中からハンドガンが現れた。 「持ってていいよ。私持っててもどうせうまく使えないし」 そのほうが僕も攻撃できるしありがたい。そうすることにして腰に挿した。 『それでは、ダイスを振って先にお進みください』 僕はダイスをアスカに渡した。
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