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ヒールが僅かな段差に引っ掛かり、立ちすくんで動けなくなる。
泣いて、どうなるってわけでもないのに……「私の、バカ……」
駆け寄る足音が近づいて来て、呟いた私の首筋にふわりと腕が巻かれた。
「誰が、バカだって?」
耳に届いた聞き馴染んだ声に、びくりとする。
「弘輝のことに、決まってるでしょ……バカ、結婚サギ……」
回された腕を振り払うこともできないまま、当たり散らす私に、
「結婚サギって、誰がだよ?」
弘輝が尋ねる。
「……あなたに、決まってるでしょ!」
ヒステリックに同じようなセリフをくり返す私の顔の前に、
「……これでもか?」
と、ふいに小さな箱が差し出された。
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