01 桜の記憶

1/1
前へ
/5ページ
次へ

01 桜の記憶

 はらはらと舞い落ちる薄紅に、私の心は落ち着かなくなった。  くちびるに触れる花の香り。懐かしい記憶。触れ合った、春の記憶。  けれどそんな期待をする私を裏切るように、ただざあっと春の嵐が縁側に吹き込んだ。  寒い。舞い上がった桜の死骸が髪に絡む。  あなたは風になったというけれど、今、私に触れたのはあなたでしたか?
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加