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03 つみびと
祈るように頬に触れ、願うように君を見つめた。
微かな怯えを含んだ揺れる瞳はこれから起こることを予期し、期待するようで「わからない」を伝えていた。
鼓動の速まりが彼女の胸を上下させる。触れれば容易く落ちるシーツだけが彼女を守る。
僕はシーツに手をかける。
「こころまではきずつけないから――」
僕の声は自らの鋭利さに優しさというベールを纏わせようと必死で、
「――あなたのことをきずつけてもいいですか」
彼女は目を見開き、そして、顎を沈める。
月明かり射すこの部屋に、彼女の赤い血が流れる。
僕はつみびとになった。
あなたを奪った、つみびとに。
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