sorry呀!(エピソード完結済)

6/8
前へ
/56ページ
次へ
6  スペルマを吐き出した後も、里中の陰茎は、緩く勃起を続けていた。  ジンジンと疼いているのはペニスなのか。  それとも、別の場所なのか―― 「おい、なんか……おかしいぞ。腹ン中、熱い」  まだかすかに呼吸を乱れさせたまま、里中が李へと目を向ける。  李は両肩をすくめて、パチンと指からコンドームを外した。  ンなもん、いつの間に着けてやがったのか。 「それたぶん、マッサージの効果ですね。血行、良くなってます。気持ちいいの続きますよ」 「続くってったって……オマエ」 「そのうち一晩で、何回もできるようになります、勃起持続スゴくなる」  言って、李が里中のモノへと視線を移した。 「里中さん。マッサージと相性合うみたい。まだ元気あって、よかったですね」 「よかったっていうか……李さんよ。こりゃ、どうにもおさまりが悪りぃだろうが。まるきり『ナントカの生殺し』ってヤツだ」  そして里中は、こらえきれぬとばかりに、また自慰を始めてしまう。  両手でペニスを扱けば、妙な声がこみ上げそうになり、くちびるを必死に噛みしめた。  男茎は敏感になりすぎていて、自分の指のザラツキにすら、ヒリつくような痛みを覚えてしまう。  欲望は次々込み上げるというのに、強い快感を掴むことができぬまま、ジレったくて堪らなかった。  きつく眉根を寄せながら、里中は、床を盛大に汚している自らの白濁を、指でたっぷりと掬い取り、ペニスに塗りつける。  だがそれでも、潤滑剤としては不足に思えた。  「アレ」を――  「マッサージ」を。  ――やってほしい。  脳裏に「その」欲望が浮かんだ瞬間、里中の頬が、羞恥のあまりに、カッと燃え上がる。  そんなギクシャクとした自慰に耽る里中へ、李が、チラと視線を向けた。   「今日はもう、マッサージはおしまい。ワタシも手が疲れました」  李は里中が頼みもしないうちから、シレっとそう吐き捨てる。  そして、床に転がったビーフィーターの壜を、ひょいとつかみ上げ、コップをジンで満たした。  そう、「コップ」だ。  「グラス」なんて洒落たものではない。  昔ながらの昭和の香り漂う、ビール会社の名前が白い文字でプリントされているようなヤツ。  そのコップに注ぎ入れたジンを、李はストレートで呷って、軽く顔をしかめた。  里中が、李が手にしているジンのボトルをねめつける。  李は「ヤレヤレ」といった風に、ふたたび肩をすくめた。 「里中さん、ヘンなもの、穴に入れたりしちゃダメですからね。ばい菌がはいりますし、腸、危ないです」  言って李は、手にした壜を掲げて、「こんなのとか」と言い足した。    ……っくしょう。  里中が、噛みしめるように呟く。 「うーん、じゃあ里中さん。こうするといいです」  李が、里中の脚の間に指を滑らせた。  李の肌の滑らかさに、里中は、なにかホッとするような心持ちを覚えてしまう。 「自分で中に挿れるのは、まだ難しいですからね」  李の肌は、少しひんやりとしていた。  その指先が、里中の会陰部分を、そっと押し始める。  リズミカルに波打つように、小気味よく指圧されて、快感が里中の中へとさざ波のように広がった。  そして、その波は、腹の奥で燃える疼きに溶け込んでいく。 「ほら、里中さん、自分でやってみてください」  李が、里中の片手を取って「その部分」へと導いた。  数回、刺激の仕方を「手ほどき」すると、李は自らの手をひっこめる。  しかたがない。  里中は自分で「それ」をするしかなくなる。  李がするようにはできなかったが、それでも。  里中の指は、それなりに勘所を得ていたようで、やがて、自らの快感に火を点すことができた。  片手で陰茎を扱きながら、もう片方の手指で陰嚢の裏、蟻の門渡りを刺激する――  強面の中年ヤクザが深夜に見せるには、あまりに「シャビー」でムゴい痴態ではなかろうかと。  自分自身でさえ情けなく思うが、里中とて、もうどうすることもできない。  その行為を続けるしかなかった。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

317人が本棚に入れています
本棚に追加