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6
スペルマを吐き出した後も、里中の陰茎は、緩く勃起を続けていた。
ジンジンと疼いているのはペニスなのか。
それとも、別の場所なのか――
「おい、なんか……おかしいぞ。腹ン中、熱い」
まだかすかに呼吸を乱れさせたまま、里中が李へと目を向ける。
李は両肩をすくめて、パチンと指からコンドームを外した。
ンなもん、いつの間に着けてやがったのか。
「それたぶん、マッサージの効果ですね。血行、良くなってます。気持ちいいの続きますよ」
「続くってったって……オマエ」
「そのうち一晩で、何回もできるようになります、勃起持続スゴくなる」
言って、李が里中のモノへと視線を移した。
「里中さん。マッサージと相性合うみたい。まだ元気あって、よかったですね」
「よかったっていうか……李さんよ。こりゃ、どうにもおさまりが悪りぃだろうが。まるきり『ナントカの生殺し』ってヤツだ」
そして里中は、こらえきれぬとばかりに、また自慰を始めてしまう。
両手でペニスを扱けば、妙な声がこみ上げそうになり、くちびるを必死に噛みしめた。
男茎は敏感になりすぎていて、自分の指のザラツキにすら、ヒリつくような痛みを覚えてしまう。
欲望は次々込み上げるというのに、強い快感を掴むことができぬまま、ジレったくて堪らなかった。
きつく眉根を寄せながら、里中は、床を盛大に汚している自らの白濁を、指でたっぷりと掬い取り、ペニスに塗りつける。
だがそれでも、潤滑剤としては不足に思えた。
「アレ」を――
「マッサージ」を。
――やってほしい。
脳裏に「その」欲望が浮かんだ瞬間、里中の頬が、羞恥のあまりに、カッと燃え上がる。
そんなギクシャクとした自慰に耽る里中へ、李が、チラと視線を向けた。
「今日はもう、マッサージはおしまい。ワタシも手が疲れました」
李は里中が頼みもしないうちから、シレっとそう吐き捨てる。
そして、床に転がったビーフィーターの壜を、ひょいとつかみ上げ、コップをジンで満たした。
そう、「コップ」だ。
「グラス」なんて洒落たものではない。
昔ながらの昭和の香り漂う、ビール会社の名前が白い文字でプリントされているようなヤツ。
そのコップに注ぎ入れたジンを、李はストレートで呷って、軽く顔をしかめた。
里中が、李が手にしているジンのボトルをねめつける。
李は「ヤレヤレ」といった風に、ふたたび肩をすくめた。
「里中さん、ヘンなもの、穴に入れたりしちゃダメですからね。ばい菌がはいりますし、腸、危ないです」
言って李は、手にした壜を掲げて、「こんなのとか」と言い足した。
……っくしょう。
里中が、噛みしめるように呟く。
「うーん、じゃあ里中さん。こうするといいです」
李が、里中の脚の間に指を滑らせた。
李の肌の滑らかさに、里中は、なにかホッとするような心持ちを覚えてしまう。
「自分で中に挿れるのは、まだ難しいですからね」
李の肌は、少しひんやりとしていた。
その指先が、里中の会陰部分を、そっと押し始める。
リズミカルに波打つように、小気味よく指圧されて、快感が里中の中へとさざ波のように広がった。
そして、その波は、腹の奥で燃える疼きに溶け込んでいく。
「ほら、里中さん、自分でやってみてください」
李が、里中の片手を取って「その部分」へと導いた。
数回、刺激の仕方を「手ほどき」すると、李は自らの手をひっこめる。
しかたがない。
里中は自分で「それ」をするしかなくなる。
李がするようにはできなかったが、それでも。
里中の指は、それなりに勘所を得ていたようで、やがて、自らの快感に火を点すことができた。
片手で陰茎を扱きながら、もう片方の手指で陰嚢の裏、蟻の門渡りを刺激する――
強面の中年ヤクザが深夜に見せるには、あまりに「シャビー」でムゴい痴態ではなかろうかと。
自分自身でさえ情けなく思うが、里中とて、もうどうすることもできない。
その行為を続けるしかなかった。
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