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唔好意思(エピソード完結済)
1
里中の尾骶骨に、薄い痺れが走った。
李の指が、緩く動いて里中の「そこ」を擦り始める。
前回は気づく余裕もなかった。
だが今、里中は、丁寧に一か所ずつ、円周に沿うように入口が解されていくのを感じ取る。
まさに、それは普通の意味での「マッサージ」の手際だった。
タイには、男女を問わず会陰部をマッサージする健康法があると聞く。
男なら、いわゆる「玉裏マッサージ」というヤツだ。
もちろん大抵の場合、「それ」は性的奉仕と紙一重のもの。
しかし「行くところに行けば」、ホンモノの「治療法」として提供されるのだという。
そんな店の熟練のマッサージ師というは、大抵の場合「老婆」で、やはり性風俗とは、基本、「一線を画するもの」であるらしい。
里中は、かつてチラッと聴いたことがあった、そんな話を思い出す。
いわゆる人身売買に絡んでいた「スジ者」から耳にしたのだが、ちょっとした顔見知り程度の男だった。
さて、今じゃどうしているのか。
姿も見ないし、噂も聞かなくなって、随分経つ。
まあ大方、ミイラ取りがミイラになり、結局、バンコクだかどこだかでズブズブに沈んで、帰るに帰れなくなってるってところだろう。
ありがちな話だ――
ふと気づけば、里中の内に挿入される指が増えていた。
ツプリツプリと小さかった水音が、クポクポと、大きく響き出す。
さすがに、その音は卑猥すぎた。
里中の頬が、どうしようもなく熱くなる。
そして、李の指先が解す場所も、入口から奥の方へと移っていた。
内側を、まんべんなくやわらかく擦り上げられれば、くすぐったさと紙一重の薄膜の心地よさが、オブラートが溶け出すように幾重にも剥がれ落ちてきて、里中はたまらず、喉の奥に呻き声をくぐもらせる。
「気持ちいいいですか?」
李が問いかけた。
それが「どういう」意味なのか。李の声色からは、まるで読み取れない。
だがともかく、とんでもなく心地はよかったから、里中は、くちびるを噛み締めながら、ただ本能的に頷いた。
李の指の動きが、複雑さを増していく。
コリやシコリを探るようにゆっくりと指の腹を押し込まれれば、ジンと熱っぽい痺れが広がり。
小刻みに蠢かされれば、波紋の広がりとともに、蕩ける何かが奥へ奥へと浸みていった。
じきに里中は、前方に鋭い快感を感じ取る。
勃ってきやがった――
目線を動かしてみれば、里中の一物は、かなりの角度で勃ち上がっていた。
ふっくりと膨らんだ先端は、すでに先走りに艶めいている。
その後ろ、種袋の陰に李の手が垣間見え、里中の胸に、羞恥心が一気に沸き起こった。
自分が、オンナみたいに「ほじられて」いるのだという事実を、不意に突きつけられたようで。
グチョグチョとかき回される水音が、まるでエロビデオの手マンの効果音のように聞こえて仕方がなかった。
そうやって、ともすればくじけそうになる自尊心を奮い立たせるため、里中は眉間に険しく皺を寄せて首筋を伸ばす。
するとすかさず手を止め、李が、
「痛いんですか?」と問いかけてきた。
李の声はひどく優しかった。
優しすぎるぐらいだったから、里中はただ、言葉に詰まってしまう。
くちびるを、きつく食いしばれば、こみ上げてくるモノは溢れ出す場所を失って、上へ上へと昇っていく。
瞼に熱を感じた瞬間、里中の目から、ハタリとひと粒、涙が零れ落ちた。
「里中さん?」
呼び掛けられると、また里中の瞳に熱の膜が張る。
ついに、解けたくちびるから、ひとつ吐息が溢れ出した。
「哦……」
李もまた、溜息のように一声洩らすと、
「きもち、良すぎましたね?」と続ける。
そして、「マッサージ」が再開された。
「内側」は、もう、李から与えられる個別の刺激を拾えないほど熱に蕩け切っていた。
里中の片手が、自身の隆起へと吸い寄せられる。グッと猛りを握りしめれば、獣の吼え声が口を突いて出た。
里中はそのまま、激しく肉茎を扱き始める。絶頂感が込み上げてきた。
「唔得㗎!」
李が鋭い声を上げる。
「ダメ、まだ触っては。すこし我慢してください」
ああ、前も言われたっけな。
「持続力」をつけさせるためとか。
だが……。
こいつは、あまりにも切なすぎるって。
里中は、どうしても竿を扱く手を止められなかった。
その手の甲を、李がぴしゃりと叩く。
そして、里中の手首を掴んで、陰茎から引き剥がした。
「そんなにひどくしたら、すぐイっちゃいますね、ダメですよ」
後孔をくじる手を休めぬままに、李が言った。
「ンな、殺生なこと。言うなや、李さん……」
里中はもう、苦り切って弱音を吐くしかない。
すると李は、ひとつ溜息をついて、
「しょうがないですねぇ」と、どこか明るくサラリと言い放った。
そして、ズッシリとした重みを増しつつある里中の肉茎が、李の長い手指に包み込まれた。
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