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2
滑らかな肌触りの指だった。
まるで、女に触られているみたいだと、里中は思う。
いや、やはり違った。
触れる李の掌は、里中の陰茎を包み込むように大きく、指も長い。
それは「男」の手以外の何物でもなかった。
整体やらシャンプーやらが、「女の手」じゃ、どこか「物足りない」と感じるのは、その大きさからくるものだろう。がっしりと広い範囲を掴まれるのは、やはり心地いいものだ。
ペニスに施される愛撫は、後孔へのモノと同じく、ひどく精緻だった。
やや弱いように感じるけれど、弱すぎるということはなくて。
徐々に、だが確かに快楽が募らされていくような、そんな――
今ではもう、里中の「モノ」は完全に勃ち上がっていた。固く張り詰めて、脈打っている。
そんな風に着実に高まった快感は、いずれにせよ、遅かれ早かれ行きつくところまで行きついてしまう。
「あ、……っい、くっ…いく、っ」
里中が声を絞り出した。
腰がビクリと大きく跳ねる。
その刹那、李の指先が里中の陰嚢と陰茎の周囲を、強く握りこんだ。
こみ上げ、募り切っていた射精感が、突然に行き場を断たれ、里中が切なく叫ぶ。
「これ。こんな風にすると『勃ち』は持続しますね。でもセックスのあいだ、ずっとやると悪い癖つきます」
李が淡々と語り始めた。
「だけどやっぱり、スグ射精はダメ。勃起続かなくなる。里中さんは、ちょっと早い。だから、これはガマンの練習だけに使うといいです」
まあ確かに、すぐにイッちまったら、後は萎えるばかりだがな……?
里中は、なぜかしら李の言い分に納得してしまう。
その間も、李の「マッサージ」とペニスへの刺激は続いていた。
里中は、幾度となく達しそうになる。
だが、こみ上げては弾けそうになる快感を、李はその都度、絶妙のタイミングで妨げた。
「も、ムリ…だっ……て」
喘ぎと嬌声の合間に、涙にまみれて里中が訴えた。
「李…さ、たの…む、たのむ……から、もう……」
「唉? 里中さん、もうダメですか?」
飄々と空とぼけるばかりの李に、里中が続ける。
「いか、いかせてくれ……っ」
イキたい……イキたいと、喘ぎの合間に、しゃくり上げるようにして繰り返す里中を眺めやり、李は、
「しょうがないですね」と溜息めいて小さく笑った。
李の長い指で握りこまれていた場所が、ふわりと緩む。
あん、あん、あんと、鼻にかかって甘えた声を何度も上げながら、里中はついに白濁をほとばしらせた。
その背中が腰が、大きく脈打つように痙攣する。
「良かったね、出させてもらって嬉しいね、里中さん」
子供相手に、その幸運を素朴に喜んでやるような声音で言いながら、李はズブロッカのボトルへと手を伸ばした。そして直に口をつけ、中身を呷る。
「どうしましたかね、わたし、なんだか里中さんが可愛く見えてきました。ヘンですね。おかしいです。里中さんヤクザのおっさんなのに」
言いたい放題に言うと「哈哈哈」と笑い、李はまた、ウォッカをラッパ飲みにした。
「啊……ワタシ、ちょっと酔っぱらっていますね」
いやいや。「ちょっと」どころじゃねぇだろうよ!
打ちのめされるような強烈な絶頂から、やっとわずかに解放されて、でもそれでも、ハアハアとめちゃくちゃに息を荒らげながら、里中は李に対し、心の中で、そうツッコミを入れた。
っていうか、「ヘン」に決まってる。
こんな、四十がらみの香港人にケツ穴ほじくられて竿を扱かれて、アンアンよがらされて、いいようにオモチャにされてるなんて。
普通に「おかしい」だろうが?! 一体、何やってんだよ、オレは……!
そんな風に考えながらも、里中のオルガスムスがおさまる気配は、まるでなかった。
射精の直後だというのに、気だるく甘ったるい快感がジンジンと下腹から湧き起こって止まらない。
そして、ふと視線を落とせば、里中の陰茎はまだ、実戦可能な状態を保っていた。
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