蛋撻rhapsody(エピソード完結済)

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2    ――オーソドックスな粤菜なんてモン、そもそも「ひとり」で行くようなところじゃない。  昼ならまだしも夜はなおさら。それも銀座の老舗。    かといって、組の若いのを連れていきたいような場所でもねぇし。  もちろん、アイツらにも、たまには「ちゃんとしたモン」ってのを味わわせてやった方が、教育上良かろうとは思う。だが。  正直、そういう気分にはなれねぇのは――  「なんでだろうな」と、胸のモヤモヤをひと言だけ洩らし、結局、里中は組の若いのを焼肉に連れて行った。    まあ、それにしたって、若いヤツはよく喰うわ……と。  ビールを片手に、もっぱらツマミにナムルとキムチをつつきながら、里中は組の連中を打ち眺める。  そうだな。  「あの店」も、俺は夜、秦の大叔父に「連れられて」行ったんだからな。  あそこは、そもそも大叔父の「行きつけ」だ。  そりゃ、コイツらを引き連れて、俺がデカい顔して行きたい気になれねぇのも当然か――   だが、忽然と姿を消してしまった秦が、その店に顔を出すことも、もうないのかもしれない……などと、そんなことがよぎれば、里中の胸もまた、すこしせつなくなる。    するとふと、里中の脳裏に、酒家(レストラン)の支配人、李の顔が浮かんだ。  自称、「張國榮(レスリー・チャン)」似。  「言われてみれば、まあそうかもな?」くらいには、似ているかもしれない。  そこそこの美男子で、年齢不詳な男の横顔が―― *
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