318人が本棚に入れています
本棚に追加
聖誕快樂!(エピソード完結済)
1
ほぼほぼ、一気呵成に食べ終えた「干炒牛河」の皿から視線を上げ、里中は深い溜息をついた。
そして、蛍手の中国茶杯を摘み取ると、かなり濃くなった普洱茶を、グビリと飲み下す。
ちょうどその時、翠園酒家の支配人李が、里中のテーブルへとやってきた。
「どうぞ」と、里中の前に小皿とフォークを滑らせる。
里中が怪訝に眉根を寄せた。
「おっと、李さん。こんなモンは頼んじゃないぞ」
「これは、わたしからのサービス……オマケです。お礼のしるしに」
――礼?
一瞬、顔にクエスチョンマークを貼り付けてから、里中はハッと思い当たる。
ああ、あれか――と。
「玲姐姐」の件。
「玲姐姐」というのは、銀寮会の下部団体のシマで足裏マッサージの店を出してる女で。
まあ、李の知り合い――というか。
李いわく、「お姉さん」にあたる女らしいのだが。
とある事情で、丁度、銀寮会内部がゴタついていた時。
そのスキを縫って、近隣の組が、みかじめの二重取りを狙って「玲姐姐」にチョッカイを掛けてきた。
そのゴタゴタに、里中が、チョイと口を利いて、諸々を丸く収めてやったことがあったのだった。
里中とて、天下の砧興業の代貸だ。
三次団体の間のいさかいを取り持つくらい、どうということもないのだが――
……って、オイ。
それにしたって、「菓子」のサービスが「礼」だと?
最初のコメントを投稿しよう!