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寿司屋のオマケで貰った、いつもの分厚い湯飲みにくちびるをつけ、茶をひと口啜る。
里中の口から、思わず「ヤレヤレ」と溜息が漏れた。
ふと、下腹部に違和感を覚える。
「もよおして」いた。
しげしげと眺めやれば、スラックスのファスナーに「張り」ができている。
モワリと、ある女の顔が浮かんだ。
李の部屋の玄関先で行き合った年増女。
「玲姐姐」
ったく、李さんがヘンなこと言いやがるから……。
――そうなのだ。
このところ、まあまあ「イイ感じ」のことが増えてきていた。
特に朝だ、朝がイイ。
結構な割合で、朝勃ちが起きていた。
「よし、イケる」と。
何度か女を誂えてみた。だが――
最初はいいのだ。しかし、最後までイケるかと思いきや、それがどうにも。
そう。
現在、里中においては、深刻な――
ごく深刻な「中折れ」問題が勃発していたのだった。
気づけば、スラックスの「内側」は、すでに萎えていた。
里中は「己自身」をシゲシゲと眺めやっていた視線を湯飲みへと戻す。そして、
なんだよ、ったく。
「疲れマラ」かよ……と。
またしても溜息をつきたい気持ちになった。
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