聖誕快樂!(エピソード完結済)

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 クラブを後にし、表に出て、組長を車に乗せると、里中は走り去っていくテールランプを最敬礼で見送った。  そして、夜半過ぎの銀座の通りで、ひとつ深い吐息を漏らす。  大して飲んではいなかった。  いくら「無礼講だ」と水を向けられようとも、組長(オヤジ)の前で羽目を外せるほど、里中も、もう若くはない。 「さて……どうすっかな」  里中が、独り呟く。  小腹が空いた気もするが――  そんなことを考えながらも里中は、とりあえず四丁目方向へと、ぶらり歩き出した。  和光が見えるあたりで、ふと歩調を緩め、里中は顔を上げる。  そこはちょうど、翠園酒家が入っているビルの前だった。  もちろん、最上階の店のネオンは消えている。  視線を戻し、里中がまた歩き出そうとした時だった。  ビルの玄関先から目の前の歩道に、ゆらりと男が飛び出してきた。 「おいおい、なんだよ、兄ちゃん?」  里中が、やや抑えた口調で咎めれば、どこか危なっかしい歩調の男が、ゆっくり振り返る。  割と長身のその男は、モール地で出来た赤白のサンタ帽を被っていた。 「……おや、さとなかさん?」 「なんだよ、李さんか」  男と里中は、ほぼ同時に言い合った。 ******* どうでもいい話 【龍島(Lucullus)のチーズケーキ】 香港のペニンシュラホテル系列? だかのキャンディーショップ「龍島(Lucllus)」 日本のペニンシュラとは、残念ながら関係なさそうです いやいやいや……というか おそらく日本のケーキブティックの方が、いくらでも美味しいケーキがあるでしょうね (今は分かりませんが)なぜか、ふた昔以上前の香港ってのは、どうにもベーカリーとケーキがダメダメで(イギリス植民地時代からの悪影響?(笑)) そのなかでも、別格に美味しい(と当時は思った)のが、龍島のチーズケーキでした スフレタイプとクリームタイプの中間のような 粉砂糖を山ほど振りかけた分厚~いカットケーキ クラッシュナッツが側面にまぶしてあります あらためて、Lucllusのサイトなど見てみたのですが、今は、かつてとは随分変わった様子 当時は(スーパーシックだった頃の)セレクトショップLane Crawfordのケーキブティック的おもむきでしたが…… ここで書いたチーズケーキと同じものは、もうとっくに作っていないようです なので、このチーズケーキも、まさに「幻」となってしまいました もう二度と食べられないからこそ、また食べたい 個人的な思い出のケーキです 李さんが入手したのは、(実在しないだろう)そのケーキということで!
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