聖誕快樂!(エピソード完結済)

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4 「おう、今、帰りかい? 李さん」  里中が尋ねる。  ――っていうか、この広東人(カントンヤン)。  なにをヘンテコなサンタの帽子なぞかぶっていやがる? 「(ハイ)……そうですよ」  李の返答は、その足元と同じく、どこかしら覚束ない様子だった。 「なんだ、李さん。飲んでンのか?」 「今日、店、忙しかったです。売上もタクサンありました」 「そうかい、ソイツは景気のいいこって、何よりだ。ま、クリスマスだしな」 「だから、店閉めてから、一杯飲みました」  いや。  その様子じゃ、「一杯」どころじゃなさそうだがよ?  「…里中さんは、どうしました? こんな時間に」 「ああ、オレはまあ」  オヤジの付き合いで……と、里中が言いかけたところに、李が割って入る。 「そうだ、飲みましょう、里中さん! これから一緒に、飲みに行きましょう!」 「李さん、アンタ……もう結構、出来上がってるみたいだぜ、やめときな」 「(モウ)! 全然、飲み足りないですね」  いやいや、全然足りてるだろ……と、胸の内で呟いた里中の腕が、グイと李に掴まれた。 「前、一緒に行ったバーで、好冇(いいですよね)?」  そう言うや否や、頭からサンタ帽をひょいと取ると、李は通りがかりのタクシーにすかさず手を上げた。  なんだなんだ?   李さん、今晩は、メチャメチャ「ごきげん」だな。  オヤジといい、李さんといい。  やっぱり、世の中「クリスマス」っていうと、いい大人までが「浮かれトンチキ」になるモンなんか。
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