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気付くと、人混みの中に立っていた もう、何日こうしているかわからない位長い間。俺は一人、訳もわからずとにかく立っていた。 暑くて狭い。箱の様な物の中に、びっしりと人が詰められている。箱は時々ガタゴトと規則的に揺れ、その時だけ微かに空気が流れて移動している事がわかった。 箱の高い所に、格子のはまった小さな窓が一つだけあり、それが明かりとり兼換気になっているらしい。 箱に詰められているのは、男女問わず様々な年齢層の人間だった。高そうな服を着ている者もいれば、貧しげな者もいる。むずがって泣く子も、もう泣き疲れたのか涙の跡を残して眠る子もいた。家族らしきグループもあれば、友人、知人でまとまっている者もいる。また、俺のように一人でいる者もかなりいた。 男の多くは帽子をかぶっており、殆どの女はスカーフを頭にかぶっているため、薄暗い中髪の色などはわからなかったが、肌は白い者から浅黒いものまでいるようだった。 全体的に、背の丈は若干低めかもしれない。少なくとも俺は高い方だった。だがとてつもなく高いわけではない。俺と同じくらいの背のものもいた。 暑くて狭い上に、もう限界に近く立ち続けていて足が痛い。足の痛みを誤魔化そうと、少しだけ位置をずらすのが精一杯だ。ただでさえ暑くて狭くて死にそうなのに、むせそうな程の体臭と排泄物の臭いが混じり、これ以上の地獄などないのではと思った。一応排泄物用のバケツはあったが、そのバケツを使う余裕があったのはせいぜい一日…実際はそれ以下だった。スペースもなかったし、気持ちの余裕はもっと無かった。断発的に喧嘩が勃発していたが、多くは罵り合うだけだった。俺にはその言葉はわからなかったが、少なくともいくつかの言語が話されていて、全ての人が同じ言語圏ではない事は察せられた。
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