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空腹と渇き、それから暑さと耐え難い不衛生さ 二日目か三日目か覚えていないが、最初の老人が人と人に挟まれたまま、立ったまま、息絶えていた。悲鳴と嘆きと罵声と。 その翌日にはもっと沢山の者が命を落とした。 抵抗する家族もいたが、命を落とした者は箱の隅に寄せられ、積み上げられていった。誰も死体と一緒に立っていたくはなかったし、崩れた死体の上にも立ちたくなかったからだ。 少しだけ、スペースが出来てから数えてみたら、この箱には184人の人間が詰め込まれていた。そして、積まれた死体は52。もしかすると母親が抱えている赤子も既に死んでいるかもしれない。184が132に減ったところで、座れる程のスペースが出来た訳ではないし、今度は死体が邪魔になり耐え難い悪臭を放ちだしていた。死体が積まれた側の人々は結局死体を踏んで立つしかなくなり、最終的にはだれも死体を積まなくなった。
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