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戦闘という名の日常。
はじめのうちは、普段の戦闘となんら変わりなかった。ただ、木々の中をひたすら行軍し、先へ先へと進んでいることだけが違う。時には獣道すら突き進み、もちろん軍の中には疲れてふらつく者もいた。だが、立ち止まろうとすれば容赦なく銃が向けられ、彼らは従うしかなかった。
その日、三度目の戦闘の中、リーフは駆けていた。のろのろしていたら、標的にされて終わるーーーー彼はそれを、セグから教わったばかりだった。
気配を感じてふと振り返ると、間近で爆発音が響いた。リーフは反射的に飛び退き、白い煙から逃れてそちらを見る。
「……………!」
煙に遮られ、中の様子は見えない。しかし、リーフにはなにが起きたのかは理解できた。おそらく、誰かが地雷を踏んだのだ。敵か味方か判らないが、生きてはいないだろう。
小さな、声にならない悲鳴を上げて、リーフは素早くその場を去った。煙がなくなった視界に映るものが、予想できたからだ。
無我夢中で走りーーーーはたと気付き、リーフは足を止める。
「あれ? そういえば、ここ、どこだろ……」
いつの間にか、戦場の叫び声や銃声は聞こえなくなっていた。自身の周りに広がる木々を、リーフはぐるりと見回す。
「ーーーーおい」
低い、聞き覚えのある声が、やけにとおって聞こえた。リーフは振り返ると同時に、頭に浮かんだ人物の名を呼ぶ。
「あ、セグ……」
「おまえ、なんでこんな所にいるんだ?」
若干呆れた口調で、セグは続ける。
「軍はとっくに引き揚げたってのに、いったいなにやってんだ? はぐれただけでも、脱走したと見なされて罰を受けるんだ。バレる前にさっさと戻るぞ」
返事を待たずにセグは踵を返してしまい、リーフは慌ててあとを追った。
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