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「いえ、そんな事ありませんわ。扇風機が三つも回っていますもの」
肩甲骨まで垂れた雅やかな緑の黒髪をさらさらと靡かせるミサキの言う通りベッドへ向けて扇風機が三つも回っている。無論、俺が所有する全扇風機を結集させ用意したのである。
「へへへ、可笑しいでしょう」と俺。
「いえ、そんな事ありませんわ」とミサキは言いながらも流石に可笑しそうであったが、「それどころか、お客様のお優しい心遣いを感じまして大変有り難く存じております」と慇懃に礼を言った。
俺はその言葉遣いにも少々戸惑いつつ、「はあ、そうですか、いや、何せ、エアコンがないもんですからこの位はしないといけないと思いまして」
「エアコンが無くたって私(わたくし)には窓から吹き込んで来る風と相俟って快適に感じられますわ」
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