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「あんたらはあんたらの和、つまり同調で成り立つ偽りの瞞しの和の中に入ろうとしない俺を会社の一員である以上、放ってはおけず俺に色々ちょっかいを掛け、時にトラブルを起こさせたが、俺からあんたらにちょっかいを掛けてトラブルを起こした事は事実上一度も無いのだ。俺はあんたらを寄せ付けず干渉しなかったのにあんたらは俺に興味津々で干渉せずにはいられなかった。実に鬱陶しかった。俺の方では俗物との付き合いは懲り懲りだから独りぼっちでも構わなかったし、あんたらが偽りの瞞しの和の中で何の疑問も違和感も抱かず安住していられる事も甚だ軽蔑しながらも構わないでいたのにあんたらは俺を構わない訳にはいかなかった。実に鬱陶しかった。そして俺が相変わらず皆を避け、突っ撥ね続けていたら或る日、工場長さん、あんたはこう言ってござったな、『お前は浮いている』と。無論、あんたは俺を非難する為に言ったに違いないが、俺にとっては最上の褒め言葉だ。何故ならあんたらの様に空気を読んであんたらの偽りの瞞しの和に同調するというさもしい真似をしていない証左となるからだ。どうよ、誇るべきキャリアでがしょ」  俺が言い終わった後、社長らは何やらサルバドール・ダリの奇怪な時空間に迷い込んだような変な空気が揺曳する中、こんな人間が此の世にいるとは・・・と新種の動物を見るかの様に暫し瞠若として俺に視線を集めていた。が、此の儘、何も言い返さないでいては社長の面子が立たんと自ら奮い立った社長は、皮肉を込めてこう言った。 「お前は仙人か?」  すると、ここに居合わせた俺以外の者達は電気スタンドと言わず机と言わず空気と言わず事務所全体を振動させる程の声を立てて大笑いした。  俗物はこうして独りの人間を寄って集って辱め楽しむ、高貴とは正反対の下賤で卑劣な性質を有しているのである。
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