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「いいの?そんなこと言われたら,僕は本気にするよ?」
「はい。――ただし,この部屋に来る時は,その指輪を外してくれると私も助かりますけど」
私は彼の左手薬指の,プラチナの結婚指輪を指差して言った。それを見たら,イヤでも現実を思い知ってしまうから。せめて夢を見させてもらう間くらいは,外してもらった方が罪悪感も薄れると思ったのだ。
「分かった。次からは外すよ。――"友梨"って呼んでいいかな?」
「はい。じゃあ私は……,"弘人さん"って?」
「うん。ただし,プライベートだけね。会社ではいつも通りに」
「もちろん,そのつもりです」
――それが,私と彼との"道ならぬ恋"の始まりだった。
最初は週末だけだったのが,いつの間にか,彼はほぼ毎日私の部屋に来て,私を抱いてから帰宅するようになっていた。
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