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春日幸哉は帰国する
久しぶりの日本だからか、少し浮かれている気がする。
嗅ぎ慣れない故郷の空気と涼しげな風。桜はもう散ったかな。
梅雨はまだだろう。
すんすん鼻をきかせながら、そんなことを思う。
夏はまだまだこない。
「ゆきや」って結構いい名前だ、と小さく呟く。嫌いで何より憎んでいる両親だけれど、そこだけには感謝してる。
使い古した鞄から、小さな文庫本を取り出す。
彼女との出会い。
もう二度と別れるものか。そう心に決めて。
なんでもないような一歩を踏み出した。
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