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胡蝶一葉は自転車に乗れない
いつからかと問われても答えられない。
なぜかもわからない。
ただ、胡蝶一葉は昔から自転車に乗れなかった。
じつは、一輪車にも乗れなかった。
ただ、同級の女子たちがそうするのをジメジメした校庭の隅で眺めているだけだった。
白いコンクリートの校舎のはじに座り込み、今日も黒く染めた長髪でジメジメに同化していた。
きっと私はここのようなものなのだ。
口に出して言う。
私はジメジメした隅の方で、彼女らはずっと太陽というスポットライトが当たるひなたなのだろうな。
彼女はどちらかというと森博嗣のような作家が書く作品をこよなく愛していた。
きっとそれは、年頃の少女にしては「異常」なのだろうと思う。
(どちらかというと、彼女は「異例」という言葉の方が好ましいと思っていたし、友人にはそれを強要する節も見受けられた)
そして、彼女にとってはそうであることなどどうでもよかった。
「私はジメジメでいいのだ。」
もう一度、口に出した。
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