あの子はゲームがしたかった

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それからも、僕はアルバムをめくる。 一枚の写真が目に入った。 僕との勝負場面を、両親が撮影した物。 下には、当時四歳の妹のコメントが。 『お兄ちゃん 真剣勝負って言ったのに 弱気だったヨ(・´з`・)』 僕はとうとう泣き出した。 我慢していた涙があふれ出す。 声を上げずに、口だけをただ大きく開けながら。 午後の、一人だけの世界で、ヤケに静かで広い部屋で、僕は号泣した。 妹の笑顔と不満そうに頬を膨らませる顔が次々と脳内に浮かび、こらえきれなくなる。 激しい罪悪感に押しつぶされそうになった。 膝に顔をうずめながら、僕はその日、生まれて初めて声に出さずに大泣きした。
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