第2章 食料と始まる学校探索

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 覚悟を決めた一樹たちはシステムを使用しつつ視聴覚室の扉の前で立ち並んだ。  奈美と一樹がローブに身を包み、響輝と喜巳花がアーマーを装着。背後で装備を持たないライトと綺星を守る形になっている。  一樹としては自分よりライトがシステムを使用すべきだと思っていた。正直戦力になるとは思えない。  だけど、やはりライトは二年生。一年とはいえ年上である自分が年下に押し付けていい代物ではないことも理解している。  結果、こういう形でいまに至る。 「じゃぁ……開けるよ?」  奈美がゆっくり扉に手をかけようとする。 「あぁ、ええよ、そういうの」  が、喜巳花は奈美が出す雰囲気をガン無視。ガラリと音を立てながらその扉を開けた。 「ちょっ、ま……」  突然目の前の扉が意図せず開けられたことになる奈美。ひっくり返るように後ろに飛びのく。床を転がりつつ扉から距離をとる。 「おう、どうした? 上級生が無様じゃねえか」  響輝がくずれる奈美をケラケラ笑い飛ばしつつ、扉に顔をのぞかせる。そしてすぐに首をうなずかせた。 「オッケー、近くに化け物はいないな。よし、行こう」  さっさと教室を出ていこうとする響輝と喜巳花。その後ろで思わず頭をかかえる奈美の姿があった。 「……あのさ……その軽いノリやめない? 本気で心臓に悪いんだけど。タダの移動教室じゃないんだよ?」 「え? これから図工室行くんだろ? 教室移動じゃねえか?」 「ちげぇえよ!! 謎のお友だちと遭遇する可能性があるんだよ、ねえ!? おい、聞けよ!!」  奈美の制止むなしくスタスタと廊下に出て歩いていくふたり。しかし、すぐに響輝はこちらに振り向いた。 「でもさ、ビクビクするより堂々と行こうぜ? 化け物を倒せる力があるのは間違いないんだ。  気を張りすぎても不安が大きくなるだけだろ? 後ろにいる下級生の不安をあおるようなことはもってのほか、違うか?」  唐突な正論が放たれた。奈美も後ろを向いて綺星とライトの姿を確認、ため息を吐いて軽く笑みをこぼした。 「……そういう、言い返せないド正論をポッと吐くのやめない?  なんにも考えてない、パッパラパーな性格してるくせに。ほんと、君といれば、楽しい学校探索になりそうだよ」 「それ、皮肉じゃなくて嫌味になってないか?」 「褒めてるんだよ」 「やっぱ嫌味じゃねえか!」  一応話は付いたということで、全員が廊下に出ることとなった。廊下は主に二方向に分かれている。  ひとつは前方、通常教室棟に延びる廊下。一樹が目を覚ました教室もこちら側にあった。  みんなの話を聞く限り、全員がこの通常教室棟から来たという。すなわち、五―一から六―三教室のどれかから……。  そして、もう一本の廊下は右側に向かっている。特別教室棟に向かって延びる渡り廊下だ。  ちなみに、左側にも廊下はあるがすぐ行き止まり、トイレがあるだけ。  そして、図工室へ向かうと決まった一樹たちが進む方向はこの右の廊下。 「……見た感じ、廊下に化け物がうろついているってことはなさそうだね」 「なら問題ないな。行こう」  渡り廊下をゆっくり歩み進める。響輝と喜巳花が堂々と前を歩く。それを横に、廊下の右側に連なる教室に視線を向ける。  倉庫に放送室、一番奥には音楽室と並んでいる。  これを見る限り、特に変哲もない学校の校舎に見える。というか、事実そうだ。問題なのは校舎の中にいる化け物……。 「……本当になにもなさそうだな……。あるとすれば……あの角を曲がった先って感じかな……」  響輝が銃を突き当たりに向けて構える。  あの角を曲がった先は特別教室棟ということになっている。定番の展開として考えれば、なにも起きず油断したところ、角を曲がった瞬間にピンチになる。  起きてほしいはずないが……十分可能性としてはある。  角の一歩手前で一樹たちは停止。響輝と奈美が角に近づいた。ふたりは互いに顔を見合わせ合図しあう。  そしてまずは響輝が顔だけ角の先に出した。 「……あれ?」  そんな言葉を漏らす響輝はそのまま銃を構えつつ完全に体を出した。  慌てて奈美が続く。奈美は緊張した顔をずっとしていたが、ふと少し緩んだ。  ……ということは……。  一樹も顔を伸ばして角の先に続く廊下を見た。やはり、なにもいない。 「……なんや……なんも起こらんやん」 「だな……なんというか、拍子抜けだな」  一気に緊張を解いたふたりがずかずかと特別教室棟の廊下を進もうとする。 「いや、待ってよ。さすがに油断するのはまずいって。それにさ、廊下にはいなくても実は教室の中に潜んでるかもしれないよ?」  そういい、曲がり角に位置するランチルームを扉の窓からのぞこうとする奈美。 「下手に進んで背後をとられたらサイアクだよ。……下手したら、いまでもあたしたちの後ろに化け物が迫ってきているかも」 「はい、ご開帳~」ガラガラガラ…… 「あ?」  奈美が扉の窓をのぞくため顔を近づけているとき、その横で喜巳花が扉を開けてきた。  つまり、奈美の目の前で扉が動き、開かれてしまったことになる。 「どや? なんかいる?」  このあと、奈美が喜巳花をにらみつけて皮肉のひとつでも言う展開を想定していた。だが、奈美は目をまんまるにして一瞬停止。  直後、まだ開ききっていない扉をがっしりとつかみかかる。 「失礼しました……」  音を立てないよう静かにドアを引くが、最後は勢いよくドアを閉め切った。 「……どした?」  一樹が質問をするより先。奈美は無言で背中を当てて扉を押さえたその瞬間、扉に激しい音と衝撃が走った。 「……ごめん、ゆかいなお友だちとここで待ち合わせしてたの忘れてた」 「結構余裕じゃねえか」 ※校内地図  あらすじにリンクあり https://estar.jp/pictures/25558014
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