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由衣ちゃんは3時間後ピッタリにカフェにやって来ていた。黒い肩までの髪がエアコンの風でふさふさ揺れる。俺は右手をあげて立ち上がった。
「由衣ちゃん!ここ」
「あっ、秋生さん、待ちました?」
「全然待ってないよ。何飲む?」
「アイスティーにしようかな。コーヒーはねカリウムが多いから私の身体には良くないの」
それから、俺たちは急接近で仲良くなった。由衣ちゃんは気のいい子で思った通り優しい女の子だ。だがしかし、使命は果たさなければいけない。俺は下唇を噛んだ。
その日、夕暮れ時が期限だった。神さまが「もう待てない」と怒りをあらわにしていた。
「時間を少し止めてください」
「ダメだ。死神のくせに人間に恋したな」
ああ、その通りだ。
「もう待てないぞ」
なんてことだ。なぜ、俺は死神なんかになったんだ。そう思って神さまを見上げる。
「待てないものは待てない。仕方がないんだ」
神さまが俺から目を背ける。少し情けをかけてくれているのか。だったら、この仕事を放棄させてほしい。だがそれ以上、何も変わらない。
俺は仕方なくメールを打った。橋に呼び出された由衣ちゃんはキョトンとしていた。
「ゴメンね、急に呼び出したりなんかして」
「ううん、秋生さんに会えるのは嬉しい」
「由衣ちゃん」
僕はすくっと抱きつくと由衣ちゃんは細い身体を振るわせた。
「私、知ってるの」
「えっ?」
「秋生さん、連れてってよ。一緒なら怖くない」
「ダメだ」
俺は決めた。代わりに俺の命を奪って貰おうと。
俺はもう一度由衣ちゃんに抱きついた。
終わり
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