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『深夜の公園で変死体、通り魔の仕業か!?』
明け方、そう見出しの付いた新聞が配達される、何故その新聞に目を奪われるかというと、その事件がこの近所で起こったからだった。
「物騒だよな、最近」
先輩は送られてきた新聞を一部抜き取り眺めながら言った。
「こんばんは」
センサー音と共に聞き覚えのある清楚な声が耳に入る、新聞の売り場は入り口の直ぐ隣にあるので、彼女の声だというのはすぐにわかった
俺が「あっ」と言う前に、先輩はスッとバックヤードに入る、
「は、はは、いらっしゃい」
彼女がこのコンビニに通い出して早くも一ヶ月が経った。人気の無い時間帯だ、さすがに毎回俺のいる時に来られては、顔見知りにもなる。
「あの、袋、入れてもらえますか?」
「あっ、はい」
「好きなんですね、このチョコレート」
買うものはいつも決まって、ひとつ百円の小さなチョコレート、俺は微笑む彼女と少しでも会話がしたくて、わざと毎回そのチョコレートを袋に入れずに渡そうとする。
お釣りを渡すと、彼女はまた微笑んで、店を後にする、いつものように背中を追っていくと、新聞が目に入った、こんな遅い時間、もし彼女が通り魔に、襲われたら、そう思うと、俺は店を飛び出していた。
「あ、あの……お客さん」
彼女は髪をなびかせて振り返った、街灯と月明かりに照らされた彼女は僕を見て一度驚いた表情を浮かべたが、すぐに微笑んでくれた。
「こ、この辺り、最近物騒ですので、その、お気をつけ下さい」
「それを言いに?」
「はい……」
「フフッ、おかしな人」
口に手を当てながら目を細める、清楚な笑い方だ、よほど育ちが良いのだろう。
「一緒に食べます? チョコ」
「え?」
彼女はそう言うと、俺に背中を向けて歩き出した。
突然のことに唖然としていると、置いていかれそうになった。俺は小走りに彼女の少し後ろまで追い付つくと、一定の距離を置いて歩いた。
しばらくすると大きな池のある公園のベンチに彼女は腰かけた。「隣に来ないの?」と言うように俺の座る場所も空いている。
彼女が袋からチョコを取り出し、開封する。
なんだか向かい合ってその仕草を見るのに、恥ずかしくなり、俺は隣のスペースに座った。
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