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「私のことが好き?」
何も言い出せずに、戸惑っていると、正解へと導く台詞が帰ってきた。
「あ……いや、は、はい」
「私もあなたがいいわ」
「えっ、マジですか!」
「フフ、マジ、よ。あなたが私を好きになる前から、私はあなたに目をつけていたの」
怖いくらいに話が思い通りに進む、人生にはこんな時もあるのか、神様に感謝しなければ、それからこのチャンスを必ずものにしなくてはと、おれば彼女の隣に立った。
「あのコンビニの駐車場で拾った紙にね、シフトが書いてあったの、その月のシフトがね」
「あっ、あの失くしたやつ」
「だから、あなたの入る時間に来るようにしたの」
「そ、そんなに……」
「そう、あなたは? 私のどこが好きになったの?」
「え、そ、その、全部だよ。その、目、髪、肌、あと……俺を選んでくれたところとか」
「どれだけ好き?」
「そりゃもう、死ぬほど? ハハハ」
彼女は俺に向き合う。
俺も彼女と向き合う。
彼女がまた微笑んだ――――
気がつけば空は漆黒の闇夜から、ゆっくりと明るくなり始めた。
決めるなら明るくなる前に、この流れを止めるわけにはいかない。
俺は彼女の華奢な手首を掴み引っ張った。急な行動に彼女は俺の胸元へと飛び込んでくる。
「好きだ真――――」
「通り魔事件」
俺の言葉を遮るように、俺の胸元から聞こえてきた。
「え?」
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