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ファミレスにて
ここは東京某所のファミリーレストラン。
その片隅に、前髪を垂らした女性と、西洋の人形を思わせる容姿の少女が腰かけていた。
「メリー…貴女はいまだにガラケーなのね」
「しょうがないじゃん。妖怪だから機種変更もままならないし…」
メリーと呼ばれた人形のような少女は、自分の携帯電話を眺めた。スマートフォンが主流となった現在では、お世辞にも時代に即しているとは言えない通信機器だ。それもだいぶ使い込まれており、塗装は剥げ、あちこちに傷も目立つ。
前髪を垂らした女性はコーヒーカップを置いた。
「で、この前の獲物はどうだったの?」
「今、マカオにいる」
「ま…まかお…」
メリーは、電話を繰り返しかけ、ターゲットとの距離を縮める妖怪だ。役目を果たすには、手際よく距離を詰め、最後に相手の背後に立たなければならない。
しかし、今回のターゲットは何と商社マンだった。一昨日に東京で見かけ、後をつけようとしたら札幌に飛ばれ、追いかけたら昨日の昼にはロサンゼルス。そして今日はマカオである。
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