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前髪を垂らした女性は言った。
「あきらめて次に行きなさいよ」
「それが、最近連敗続きで…」
「連敗? あんたが??」
メリーは深刻そうな顔をしたまま頷くと、手元にあったオレンジジュースを一気に飲み干した。
「1月には、電話をかけた相手に振り向いてもらえず待ちぼうけ」
「2月には、セキュリティの厳しすぎるマンションで、そもそも入れず」
「3月には、東京都の池袋駅の構造がわからなくて迷子になり」
「4月には、ターゲットが中東の人で、片言のアラビア語に失笑され」
「5月には、相手がキモオタで、逆に私が追いかけまわされて」
「6月には…」
「なんだか、毎月やけ酒しそうな勢いね。で、今日呼んだ理由は?」
前髪を垂らした女性が聞くと、メリーは少し顔を上げた。
「中国の深センに行こうか悩んでいまして…」
前髪を垂らした女性は一瞬だけ視線を上げたが、すぐに納得したらしく、頷いて答えた。
「深センかぁ…最近、発展が目まぐるしいからね」
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