8人が本棚に入れています
本棚に追加
前髪を垂らした女性は不思議そうに尋ねた。
「何でいちいち出るの。あんたなら着信拒否できることくらい知ってるでしょ?」
「そのたびに、番号が違うんです」
「あ、ああ…なるほどね」
再び携帯電話が振動するとメリーは「ひっ!」という叫び声と共に、携帯電話から身を引いた。どうやら、自分自身が電話の妖怪のため、電源を切ることができないようだ。
そのあどけない視線がそっと後ろに向くと、店の裏手からメリーを眺める肥えた中年男と目があった。その目は飢えたオオカミのようにメリーに向けられる。
彼女は小声で言った。
「のっぺらぼうさん。今日は相談に乗ってくれてありがとう。とにかく…早いうちに答えを出したいと思います」
「善は急げとはいうけど、急いてはことを仕損じるからね」
メリーは飲食代を置いて速やかに立ち去った。
のっぺらぼうはコーヒーカップを眺め、そして囁いた。
「私が懲らしめてもいいのだけど、あれはあくまでメリーの獲物だもんね」
最初のコメントを投稿しよう!