無限ループ

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無限ループ

ある日、男の元に封筒が届いた。中の手紙にはこう書いてあった。 過去の俺へ この手紙は10年後の未来から送ったものだ。今から1時間後お前の家に1人の訪問者が訪れる。その男は自分のことを過去から来たお前だと言うだろう。だが、それは真っ赤な嘘だ。そいつは未来から送り込まれたお前を殺すスパイだ。 いいか、絶対騙されるなよ。それと、封筒の中には笛が入っている。その笛を吹けば未来へタイムワープ出来る。もし、助かったならその笛を吹き俺の元へ来て欲しい。無事を祈る。 その手紙を読み俺は唖然とした。未来からの手紙。俺を殺しに来るスパイ。タイムワープ出来る笛。こんな手紙信じられる訳が無かった。とりあえず椅子に座り心を落ち着かせる。殺されるかもしれないとなるとウソであったとしても平常心では居られなかった。この手紙が届いてから10分しか経っていない。時間はまだある。 考えた末、護身用の包丁くらいは持っておこうと思い取り出す。机の上にそれを置き時が過ぎるのを待った。 自分に包丁を人に向ける勇気があるのか。いやまだこれが本当と決まった訳じゃない。 ーーピンポーン 心臓が跳ね上がった。バッと振り返り時計をみる。もう既に1時間経っていたようだ。 スパイか?それとも普通の郵便配達かもしれない。恐る恐るドアへ近ずき少しだけ開ける。 「あの…宮部さんの家であっているでしょうか」 宮部とは俺の苗字だ。 「はい、そうですが…」 と答えるとドアの向こうにいた男はその返答を聞くやいなや思いっきりドアを引き開けてきた。取手を掴んでいた俺はいきなり引っ張られそれと同時に背中に隠し持っていた包丁を落としてしまった。俺は驚いた。いきなり引っ張られたのもそうだが、それ以上に驚いたのは目の前に立っていた男の顔が俺と同じだったのだ。 「え…俺……??」 「そうだ!なぁ、あの手紙は何なんだ?!スパイってなんなんだよ!あれは変装だったのか?!」 肩を捕まれ揺さぶられながら大声でわけの分からないことを言われさらに頭が混乱した。 「お前はほんとに俺なのか?!」 「いや、俺が聞きたいよ!!お前こそ誰なんだよ…!ちょ…離せっ!!」 焦っていたからか力の加減がきかなかったらしい。俺に振り飛ばされた謎の男は体制を崩しそのまま地面に頭を強く打ち気を失った。地面が赤く染まっていく。 (やばい……ど……う…すれば…) ふと、笛のことを思い出す。 ピーッ… 気づくと俺は笛を吹いていた。早くこの状況から抜け出したかったのだろう。 目を開けると俺が居たのは自分の住んでいるマンションの目の前だった。 急いで階段を駆け登り俺の部屋の前に行きチャイムを押した。 「はい、どちら様でしょうか…」 ゆっくりとドアが開く。 「あ…俺だ!お前はほんとに俺なのか?!俺のとこに来た男は誰なんだよ!」 「は…?何言って…?…って…俺?!…お前が俺を殺しに来たって言うスパイか?!!」 「いや違う…!!聞いてくれ…!俺はお前で俺はお前から手紙を貰ったんだ!」 「それも嘘だろう…!!信じないからな…!」 トスッ… と、俺は未来の俺に刺されてしまった。 一体あの手紙は誰からのものだったのだろうか。
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