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僕と詩織はそれから直ぐに付き合い始めた。二人とも仕事が多忙だったので中々デートも出来なかったが、僕等は毎朝一緒に走るのが日課になっていた。
今日も朝の六時、未だ暗い時間に彼女の自宅を訪ねた。
インターフォンを鳴らすと彼女の母親が出迎えてくれる。
「高山先生。お早うございます。直ぐに詩織は参りますので・・」
続いて詩織が「おはよう」と言って出て来た。
僕等は手を繋いで一緒に走り始める。彼女の夜間視力では暗がりでのランニングには僕のサポートが欠かせない。
僕等が朝の暗い時間から走るのは出逢ったあの橋の上で日の出を見る為だ。
二人でいつもの橋の中央まで走る。東の山脈を見るとそこは副らと明るくなり始めている。僕等は肩を並べてその日の出を見つめていた。
山の頂きに太陽の光が顔を出した。それは眩しい輝きで、暗かった街に一気に光が差し込む。
そして川から立ち上る水蒸気が太陽光に照らされてキラキラと輝いた。
「綺麗・・。これを貴方と見たかったの・・」
そう言う詩織に僕は頷き、彼女を強く抱きしめた。
そして彼女に口づけをする。
それはとても幸福な瞬間だった。
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