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詩織と付き合い始めて半年後、僕は米国スタンフォード大学への出向が決まった。
僕が取り組んでいる『網膜色素変性症』の治療をiPS細胞で革新する研究が認められ、スタンフォード大学での臨床試験に参加することになったのだ。この為、僕は最低でも三年間は米国に滞在しなければならない。
このことを僕はいつもの橋の上で彼女に伝えた。そして僕は彼女の前で膝を突いてポケットから出した結婚指輪を彼女に差し出した。
「僕の研究が認められてスタンフォードに出向する。少し待たせてしまうけど、帰国したら、僕と結婚して欲しい」
彼女は両手を口に当て、その指輪と僕を交互に見ていた。彼女の瞳に涙が浮かぶのが分かる。
「詩織、どうかな・・?」
彼女が大きく頷いてくれた。
「イエスよ。達也! ありがとう。そして、おめでとう。貴方の夢が実現するのね。そして私は貴方の妻になる。こんな幸せなことはないわ!」
僕達は再び橋の上で抱き合った。
僕達が付き合っていることは同僚には秘密にしていたので、このプロポーズの成功を彼らに誇ることはできない。
その代わり、いつもの様に朝日に照らされた水蒸気がキラキラと輝き、僕等の未来を祝福してくれている様に感じた。
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