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周りが少しずつ明るくなってくる。そして前方に橋が見えて来た。その中央に白い杖を突いた詩織が立っているのが見える。
僕は遠くから詩織に向かって叫んだ。
「詩織!!」
ビクンとして詩織が僕の方を向き直った。
でもその目は虚で僕は見えていない様だ。首を傾げているのが見える。
更に近付き、もう一度叫んだ。
「詩織!!」
今度は完全に僕の声を認識したようだ。眼を大きく見開いている。彼女の左手から白い杖が足元に落ちた。
僕は走り込むと彼女を抱きしめた。
「た・・達也・・さん」
僕の眼から大粒の涙が溢れた。丁度、太陽が山の頂から顔を出し、川を照らし始めている。
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