再び見る輝き

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でも、その前に診察しないと。 僕はまず視野検査を行った。まだ視野狭窄(しやきょうさく)は起っていない様だ。そして広角眼底カメラとOCT(光干渉断層計)で網膜周辺部の状況を確認した。『網膜色素変性症』の特徴的所見である骨小体色素沈着や視神経の萎縮が見られる。更に確定診断の為、ERG(網膜電図)の検査を行った。 結局、二時間ほどで全ての検査を終わらせると彼女に診断結果を説明した。 「残念ながら診断は『網膜色素変性症』です。網膜にある視細胞の退行変性が始まっています」 彼女は心配そうな表情を浮かべている。 「高山先生、この病気は失明してしまうのでしょうか?」 僕は大きく首を振る。 「人により進行は大きく異なりますが、統計では発症から四十年でも約六十パーセントの方が視力〇.二を維持しています。ただ飯島先生の場合は若年性ですから注意が必要です。この後、視野狭窄(しやきょうさく)羞明(しゅうめい)が進んでいきますが投薬で進行を抑えることが出来ると思います。大丈夫、夜間視力は落ちていますが、まだ多くの視細胞は正常です。当面は脳外科医として問題なく働けると思いますよ」 僕のその説明に彼女は肩を撫で下ろした様に見える。 僕はホッとしている彼女に僕の想いをぶつけた。 「それで、飯島詩織先生・・。僕も貴女と会えるのを楽しみにしていました・・」 彼女が大きく目を見開いて僕を見つめた。
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